発足半年でパートナー数は90超

 よくあるオープンイノベーションコンソーシアムのように思えるが、「決してそうではない」と劉氏は否定する。参加は無料で、所属する上での責務は一切なく、同業界の競合が制限される縛りもない。こうした“緩いネットワーク”を築いた背景には、かつての劉氏の学びがある。

 「コンサル時代にコンソーシアムを担当していたが、決め事に縛られていつしかクローズドサークルになり、ときには対等なパートナーではなく上下関係のある“お客様”になってしまう例が散見された。i2.JPでは極力制限を取り払い、まずは参加することを目的としている。条件はi2.JPのビジョンに賛同していること、技術・製品・実証の場のいずれかを持っていること、そして反社ではないこと。退会もメール1本で完了するほど自由な組織だ」

 この特徴もあり、当初はわずか7つの企業・団体で始まったi2.JPはわずか半年でパートナーが90を超えるまでに成長した。そのうち6割をスタートアップが占め、大企業とコンタクトを取りたいとのリクエストは数多い。

 アストラゼネカがi2.JPで担当するのは「円滑なコミュニティ・マネジメント」であり、大企業のライトパーソン(適切な担当者)をつないで個別に企業同士を引き合わせたり、小規模なオンラインミートアップを開いて新規加入のスタートアップを組織で紹介したり、オンラインイベントを定期的に開催したりしている。「まずは仲間を増やしてほしい。ある程度の数になればケミストリーが生まれ、直接売り込むよりもi2.JPを経由してライトパーソンに当たったほうが効率的だと知れ渡るようになる」。

 通常は自社ビジネスに直結するオープンイノベーションが多い中、i2.JPの活動はまるでビジネスマッチングそのものだ。特筆すべきはアストラゼネカ以外に、製薬企業パートナーに日本イーライリリー、大正製薬が名を連ねていること。いくら競合を厭わないとは言え、このようなケースは極めて珍しい。

 「今は最初の実証期間であり、たくさんの知見や活発なコミュニケーションの中から予防と予後の部分で、これまでには見えなかったペインポイントを見つけることが重要。そこに対応できるテクノロジーやパートナーを探し出し、患者のペインポイントを解決したい。

 日本イーライリリーや大正製薬が参加している点こそまさにオープンイノベーションの肝で、アストラゼネカが取り組む疾患領域以外を得意とするスタートアップも存在する。それを日本イーライリリーや大正製薬がカバーできるのであれば、ぜひお願いしますというスタンス。『その疾患は対応できません』では、ペイシェントセントリックの考えとはかけ離れてしまう。ほかの業界ではユーザー中心主義で業績を伸ばしている企業も多い。同じ手法が製薬企業でも活用できるとの仮説を現在進行形で確かめているところだ。そこから結果的にビジネスに貢献する事業の種が出てくる可能性は十分にある」