「フレイル」の予兆を検知するアルゴリズムを開発

 さまざまな機関や企業などとの連携を模索するなか、現在進んでいるプロジェクトとしては、ヘルスケアを軸としたAIアシスタントの開発と社会実装を目指す慶応義塾大学との共同研究や、AIを活用した冠動脈疾患の診断支援やリスク予測を実現する国立循環器病研究センターとの共同研究がある。ちなみに、慶応義塾大学や国立循環器病研究センターをパートナーに選んだ背景には、「目指す方向性や目線が近かった」(浦野氏)という点が挙げられる。

 「ソフトバンク側のヘルスケア戦略の1つに、『ウェルビーイング(Well-being)』の視点がある。これに対して慶應義塾大学の場合は、同大学医学部 医療政策・管理学教室の宮田裕章教授がこのウェルビーイングを提唱しているというのが、大きな理由の1つとなった。一方で、国立循環器病研究センターは『生活習慣病』がキーワードとなる。生活習慣病は循環器病にも大きく関連しており、医療費にも少なくない影響を与えることから、ソフトバンクの『ウェルビーイングにおいて、生活習慣病からもアプローチしたい』という考えとマッチした」(浦野氏)

 慶応義塾大学との共同研究では、「フレイル(高齢者の虚弱状態)」がテーマの1つとなる。フレイルやその前段階である「プレフレイル」をさまざまなテクノロジーによって解決していくことで、ウェルビーイングを実現していく。

 具体的には、スマホやウエアラブルデバイスなどから取得できる情報を活用し、フレイルやプレフレイルの何らかの予兆を検知する予防アルゴリズムを開発。このアルゴリズムには、AIの実装も想定している。さらに、このアルゴリズムにデジタルコーチングの技術も組み合わせ、行動変容のプログラムにもつなげていく考えだ。これらの研究開発はすでにスタートしており、予防アルゴリズムについては「2021年度末のリリース」(浦野氏)を目指す。

 このように、慶応義塾大学や国立循環器病研究センターのプロジェクトはどちらかといえば「特定のテーマに対する予防」に主眼を置いた研究開発となるが、その次のアプローチとして見据えているのは「人の行動変容を変えていく」(浦野氏)ような取り組みだ。そこには、例えば「ゲーミフィケーション」や「インセンティブ」などのさまざまなアプローチがあり、事業化する際にはその点にもしっかりと対応し、ユーザーが継続的に使ってくれるような仕組みを作ることが求められる。このような背景から、今後は「行動心理学なども取り入れ、アプリケーションやソリューションの開発を進めていく」(浦野氏)という。

 また、PHRやライフログの取得に関しては、グループ企業とだけでなく他社とのコラボレーションやデジタルトランスフォーメーションも進め、「より豊富で多彩なデータを取得し、それらを活用して行動変容につなげていく」ことが次のフェーズとなる。そして最終的に、ソフトバンクは経営理念である「情報革命で人々を幸せに」になぞらえて、「情報革命で人々を健康に」(浦野氏)というゴールを目指す。