医療分野へのAI実装を目指す

 ヘルスケア領域における別の取り組みとしては、内閣府が推進する社会実装プロジェクト「AIホスピタルによる高度診断・治療システム」がある。ソフトバンクは、同プロジェクトに2020年度から協力参加機関として参画している。

 このプロジェクトでは、医師を支援するAIサービスによって医療従事者の負担を軽減するようなプラットフォーム(医療AIプラットフォーム)の研究・構築を進めている。2022年度末の社会実装が計画されており、ソフトバンクは自社の強みである通信事業を生かす。なかでも「5Gが特に期待されている」(ソフトバンク 法人プロダクト&事業戦略本部 法人サービス施策推進統括部 担当部長の大関健一氏)ほか、ユーザー認証機能の提供・検証などにも携わっている。

ソフトバンク 法人プロダクト&事業戦略本部 法人サービス施策推進統括部 担当部長の大関健一氏
ソフトバンク 法人プロダクト&事業戦略本部 法人サービス施策推進統括部 担当部長の大関健一氏
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 また、これに付随する形でソフトバンクは、日本ユニシス、日立製作所、日本アイ・ビー・エム、三井物産とともに、厚生労働大臣および経済産業大臣の認可による「医療AIプラットフォーム技術研究組合」(略称「HAIP」)を2021年4月に設立した。この組合への参加は基本的にオープンとなっており、すでに日本マイクロソフトなども加入。2023年4月の株式会社化とともに、「補助金がなくなっても自律走行できるような医療AIプラットフォームの確立」(大関氏)を目指している。

 医療AIプラットフォームの研究テーマには、大きく分けて「サービス事業基盤」と「AI開発基盤」の2つがある。サービス事業基盤は、医療AIサービス事業者が提供するさまざまなAIサービスをプラットフォーム上で展開してもらい、病院の先生や看護師などに使ってもらうことを検討。将来的には、保険会社などへの拡大も想定する。一方でAI開発基盤は、開発ベンダーや研究者に医療AIを開発するための環境を提供していく予定だ。

 プロジェクトに関連する実証実験としては、ソフトバンクとAIメディカルサービスによる「内視鏡検査映像を5Gで伝送してAIによる画像診断補助を行う実証実験」がすでに実施された。これは、商用の5G環境を利用した内視鏡映像伝送におけるリアルタイム処理の有用性を確認するもので、「内視鏡専門医による伝送映像の比較」や「AI画像判定システムによる疾病確率の比較」などで検証された。

AIメディカルサービスと共同で、内視鏡検査映像を伝送しAI画像診断補助を行う実証実験を実施した(出所:ソフトバンク)
AIメディカルサービスと共同で、内視鏡検査映像を伝送しAI画像診断補助を行う実証実験を実施した(出所:ソフトバンク)
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 早期の社会実装を目指す医療AIプラットフォームにとって、「ビジネスとしてきちんと回る」(大関氏)ことが直近の目標となる。また将来的には、AIの活用によって「診断のレベルの向上」や「医師と患者の会話の増加」などを図るほか、健診の場においても「大量な画像のスクリーニングやダブルチェックでの見逃しがなくなり、医師の労働負荷も軽減される」(大関氏)ような世界観を見据えている。