日本の原料メーカーと協業したPHGGの製品群

 ネスレにとって、栄養を軸としたヘルスケア領域が発展する転機となったのは、2007年にグローバルレベルで実施したノバルティスからのヘルスケアニュートリション事業の買収だ。それまではコーヒー、チョコレート、調理食品といった身近な食品に健康的な価値を付加することに注力してきたが、この買収により、現在に連なる新事業の方向性がもたらされたことになる。

 こうしたバックボーンがあるためか、ネスレ ヘルスサイエンスでは他社と組むことをいとわない。栄養補助食品ではマルコメとインスタントみそ汁の「とろみ生活 料亭の味」を共同開発。ドラッグストアや通販でも購入できる栄養ケア食品では味の素とタッグを組み、ゼリーや紙パック飲料、経口補水製品などを販売している。味の素とはコーヒーでライバル関係にあるにもかかわらずだ。

 PHGGを生かした製品群も、日本の太陽化学との共同開発により製品化に成功した。太陽化学では1980年代からグアーガムの機能性について研究を進め、低粘度化する技術を確立。水溶性食物繊維として活用できるめどが立ったことで、流動食や栄養補助食品の可能性が広がった。

 「これは当カンパニーにとってオープンイノベーションの最大の成功例。ネスレはグローバル企業なので、いま、全世界の病院でPHGGを採用した製品が数多く使われている。日本発の技術がたくさんの患者に役立っている事実は非常に感慨深い」(中島氏)

 中島氏は、今後も日本の優れた原料・素材メーカーとコラボレーションしていきたいと言う。黒子になりがちなそれらのメーカーは、製品として流通する段階でのブランディングやマーケティング、販売ルートの道筋がないからだ。「グローバルにアピールできる技術を持った日本のメーカーは多い。我々が窓口となって拡大できれば、お互いのシナジーが生まれるはず。栄養に関する良質な技術を保持している人たちはぜひアプローチしてほしい」(中島氏)。