当事者目線のワーキングチーム

 「条例を作るにあたり、当市では2018年に総員13人のワーキングチームを発足しました。メンバーは市の職員に加え、認知症サポート医やケアマネジャーなど。そしてここが特徴だと思うのですが、当初から2人の認知症の当事者の方に参加してもらったのです。当事者の言葉を聞きながらすすめたからこそ、御坊市の条例がいまの形になったと考えています」

認知症の当事者さんを含めたワーキングチームの会議の様子(御坊市提供)

 御坊市が検討を始めた約1年前にはすでに、愛知県の大府市と兵庫県神戸市が認知症条例を施行していた。条例名は、大府市が「大府市認知症に対する不安のないまちづくり推進条例」、神戸市が「神戸市認知症の人にやさしいまちづくり条例」だ。

 2018年の6月、ワーキングチームの第1回会議が開かれた。仮りの条例名を「認知症にやさしいまちづくり条例」とし、これを意見交換のたたき台とした。

 この仮条約名にある「認知症にやさしい」とはどういうことか。どういうまちになれば認知症にやさしいと言えるのか──。そこから議論がスタートした。

 「具体的なイメージはなかなかまとまりませんでした」

認知症の当事者の目線から様々に発言してくれる山際さん(御坊市提供)

 それぞれに考えてはみるのだが、しっくりくるものがなかった。空気を変えたのは、参加する認知症当事者の言葉だった。

 「当時70代後半の男性、山際さんという方です。認知症と診断され6年目でした。その方が、『失敗すると、どうせ認知症やからと思われる。それが怖くて失敗を隠したくなるんや。こっちは失敗せんように、頑張ってるんやけどな。だから失敗しても気にせんでええまちになってほしい。だって認知症じゃない人だって失敗するやろ』と、そう言われたんです」

 これが突破口となった。