富士通は2020年1月、国内の従業員7万人を対象にがんの予防や仕事と治療の両立支援などを学ぶ「がん教育」を開始した。生活習慣の改善や、検診受診率向上につながる健康意識の向上を図るのが狙い。企業の従業員向けがん教育としては国内では最大規模で、海外でも例がないという。この取り組みを主導した同社 健康推進本部 健康事業統括部 統括部長の東泰弘氏は、教育は一人ひとりの意識改革の鍵になると語る。(小谷 卓也=Beyond Health)


 富士通では現在、国のマニュアルや罹患率、検診の有効性の観点から6つのがん検診を実施しています。法定検診として肺の胸部エックス線検査、生活習慣病検診の検査項目として胃のエックス線検査、大腸の便潜血検査、任意の検診として乳腺エコーまたはマンモグラフィ検査、子宮頸部の細胞診、生活病検診の追加項目として前立腺のPSA検診です。

富士通の東氏(写真:剣持 悠大、以下同)

 この中で、任意となる乳がん、子宮頸がん検診の受診状況について見ると、2019年は59.4%で6割に届いていません。2012年に本人負担無償化をして36.6%から43.9%へと7.3%上昇しましたが、そこからやっと60%程度になった状況です。

 受診率向上のために、これまでにも様々な施策を打ってきました。契約検診機関の数・地域の拡大や、検診車による巡回検診の実施。国立がん研究センターと連携して、ナッジ理論に基づいた受診勧奨パンフレットも作成しました。2019年には、定期健康診断時に検診車を配置し、定期健康診断とがん検診を同時に受診できるような施策も展開しました。

 一方で、社員の在籍期間内のがん発生が増えています。がんの新規発生状況は年々増加傾向にあり、日本全体のデータと比べると、がん以外の病気の新規発生率は半分ほどなのに対し、がんは8割くらい、年度によっては同等の発生率になっています。がんの種類では、男性は大腸、気管・肺、胃・食道が多く、女性は乳房、子宮、気管・肺が多い状況です。

 社員のがん発生が増えている背景には、社員の年齢上昇、60歳以上の社員の増加、女性社員の増加、女性固有のがんの増加などがあります。こうした中、制度やサポート体制を拡充するとともに、「がん教育」を実施することで正しい知識を習得してもらい、社員の行動変革を進めようと考えたわけです。