「3つのポイント」の実現を目指して挑戦中

 我々が取り組んでいるがんスクリーニング検査の中身と、今後の課題について触れていきます。まずは、開発の中身についてです。

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 がんのバイオマーカーとして、近年ではマイクロRNAを主とする「スモールRNA」が注目されています。リキッドバイオプシーの技術進展に伴い、スモールRNAは血液や尿、唾液などから検出できることが分かっていますが、私たちは血液中のスモールRNAの発現パターンを解析することで、がんの早期発見が可能なのではないかと考えています。

 単一のRNAのみを検出するのでは、検出感度に限界があります。ヒトでは2500種類以上のスモールRNAが報告されていますが、もともと正常なヒトの機能を発揮するために発現しているので、特定のがんだけに顕著な発現を示すスモールRNAを探しても、特定のがん以外でも発現が認められるケースがほとんどです。そのため、私たちは複数のRNAを組み合わせ、単一分子の発現でなく、複数分子の発現パターンとして捉えることで、この検出感度の限界を克服することができるのではないかと見ています。

 パターン認識は、ディープラーニングを生かせる分野です。スモールRNAの発現パターンを次世代シーケンサーを用いて網羅的に解析し、得られた発現パターンと各検体の臨床情報をAIに読み込ませます。その結果、高い精度でのがん識別が可能になるのではないかと期待しています。

 重要な点は、がんと非がんを識別しただけでは、がんが身体のいったいどこにあるのかが分からないこと。その後の精密検査で全身をくまなく検査する必要が出てくるため、受診者にも医療従事者にも負荷が高いと考えています。

 ですので、がんと非がんを識別するだけでなく、がん種の識別が必須だと考えています。現在はがん識別モデルの開発段階にありますが、開発が成功したらモデルの性能評価試験を行い、その試験結果をもとにPMDAに承認申請を行います。承認を得たのち、上市を目指していきます。

 開発を進めている中で、医療施設における血液調製、ラボでの発現データの取得などをいかに安定的に行えるかも、非常に重要であることが分かってきました。これらの検討を進めるにあたり、専門性を要する部分に関しては外部から人材を採用しチームを作って対応しています。

 東京の晴海に開発拠点となる開発ラボを作り、データのブレを極力小さくする測定系の構築を進めるとともに、血液検体をどのくらい幅のあるプロトコルで取得すれば、求める検体の品質に収まるのかも検討しています。安定的な品質の検体を確保するためには、極めて厳密なプロトコルを設計すれば良いのですが、そのプロトコルは研究室では達成できても、実際に全国の健診施設で実施可能な検査として受け入れてもらえるかというと、そうではありません。実用化を見据えて、健診の場で対応可能なプロトコルを構築するのが難しかったとメンバーからは聞いています。

 「毎年多くの人が受診する人間ドックなどの健診の場で、オプション検査として利用されるものにする」「侵襲性の低い1回の血液検査で、少量の血液から検査できる」「複数のがん種を十分な精度で見極められ、妥当な価格で提供する」。これら3つの実現を目指して挑戦中です。