1974年に日本初の「がん保険」の販売を開始したアフラック生命保険。がんと長く向き合ってきた同社が今、新たな取り組みとして着手しているのが、多様な領域の企業などとの協働による「キャンサーエコシステム(Cancer Ecosystem)」の構築だ。がんという病を「点」ではなく「線」でとらえ、どんなサービスを提供できるかを考えていると、同社 執行役員の森本晋介氏は語る。(小谷 卓也=Beyond Health)


 これまで生命保険会社は給付金や保険金を支払うことが仕事ととらえられてきましたが、大きく変わろうとしています。単に、ご加入者が病気を発症した後の金銭面のサポートだけではなく、生活者の様々なライフステージにおいて、どういうサポートが提供できるのか、そんな視点で私たちが提供する価値の範囲は広がってきています。

アフラック生命保険の森本氏(写真:剣持 悠大、以下同)

 これまでの個人的な経験として、ご加入者の方から給付金支払いのご請求を受けたとき、単にお支払いの手続きを正確・迅速に行うだけでなく、いろいろな相談を受けるケースがよくありました。私たちは医療の専門家ではありませんが、そうした話を聞く中で、果たすべき使命も変わるべきだと考えるようになりました。

 今後の仕事の範囲の広がりを説明する上で、これまでの経緯を少し振り返らせてください。私たちは1955年に米国で創業。日本では1974年に事業免許を取得して日本支店を開設し、同年に日本初の「がん保険」の販売を開始しました。2024年には50周年を迎えます。

 日本で事業を始めた当初は、がんは「不治の病」と恐れられ、本人にがんを告知することはほとんどない時代でした。給付金のご請求をいただく過程において、患者様本人にがんであることを知られてしまうことがないよう、ご家族に協力いただきながら、お支払いの手続きを行うことはとても大変でした。

 現在のがん保険の保有契約件数は1554万件で、累計の支払い金額は8兆円です*)。年間では3055億円をお支払いし、1営業日当たりの支払い金額は12億6000万円になります。

*)2020年10月末時点

 いざというときの経済的な支援が最も大事な仕事であることは変わりませんが、自治体などと連携しながら、がんに関する教育や啓発にも継続的に取り組んでいます。例えば、「がんを知る教室」は2019年に全国11カ所で実施し、3万人のお客様にご来場いただきました。

ここ数年で一気に協働を加速

 がんという病を「点」ではなく「線」でとらえたとき、アフラックとして何ができるのかという視点から新たな取り組みを開始しています。これまでは主に、がんの治療時という「点」での関わり。それに対して今後は、がん検診受診率の向上といったがんの早期発見やがんに関する啓発活動に加え、がん予防、医師とのコミュニケーション、治療の多様化への備え、クオリティーオブライフ(QOL)の維持・向上、がんになっても治療を続けながら働く、などトータルに「線」でとらえた取り組みです。

 こういったトータルの「線」としての取り組みに向けて着手したのが「キャンサーエコシステム(Cancer Ecosystem)」の構築です。「線」としての取り組みは、1社単独ではできません。多様な領域の方々と協働して、どんなサービスを提供できるか考えています。

 具体的には、スタートアップ企業とのオープンイノベーションや新規事業の創出を行う拠点「アフラック・イノベーションラボ」と、関連する技術・知見を持つスタートアップ企業へ出資する合同会社「アフラック・イノベーション・パートナーズ」を通して、ここ数年で一気に協働を加速しています。

 例えば、がん予防におけるリスク把握や生活改善という面では、2017年5月にメディカルノートに出資し、業務提携。オンライン医療相談サービスなどを展開しています。

 がんのスクリーニングの面では、2017年7月から日立製作所とがんの早期発見や早期治療を可能とする社会の構築に向けて協創。2020年6月にはCraifに出資、尿検査による痛みのない高精度ながんの早期発見に取り組んでいます。

 さらに、診断の面では、オンライン健康診断予約サービスなどに取り組むMRSOに2017年4月に出資。2019年9月には消化器系のがん早期発見を支援する内視鏡の画像診断支援AIの開発に取り組んでいるAIメディカルサービスに出資しています。2019年7月には、乳がんの早期発見に向けた革新的な画像診断装置の開発を手掛けるLily MedTechにも出資しました。

多くの人の「思い」と膨大なデータをどう生かしていくかが課題

 私たちには、がんに罹患されたご加入者への給付金のお支払いを通して、多くの人の「思い」を現場で感じ、そして積み上げてきたお客様との歴史があります。また、膨大な給付に関するデータがあります。これらをお客様や社会のためにどう生かしていくのかは今後の課題です。

 例えば、先ほど説明した「がんを知る教室」などマスを対象にした取り組みには既に着手している一方、生活者一人ひとりにがんを「自分事化」してもらう取り組みはまだまだこれからです。

 私たちは、創業以来、変わらずに実践してきたコアバリューに基づくCSV経営(Creating Shared Value=共有価値の創造)に基づき、私たちブランドプロミスである「『生きる』を創る。」を通じて、新しい価値を社会に提供し続けたいと考えています。(談)


(タイトル部のImage:剣持 悠大)