医療者でさえも「病気が見つかるのはいやだ」と考える

 実は、医療関係者であっても検診受診率が高まらない課題があると、国立がん研究センター理事長の中釜斉氏は語る。「がんの医療現場にいて感じるのは、医療関係者の中でも検診率が上がらないということ。『病気が見つかるのはいやだ』と、医療者でさえも考えるのが実情。個人の行動変容をいかに促していくのかについては、科学的に研究していく必要があるだろう」(同氏)。

議論の様子

 どうすれば個人の行動を変えられるのか。ディー・エヌ・エー(DeNA) 代表取締役会長の南場智子氏は、「健康は失って初めて自分事になる」と指摘する。「例えば40代後半では自分事にならないが、60歳を過ぎるとそろそろがんを心配しないと、という側面がある。がんが判明した後で、まさか自分がそうなるとは…と思うことも少なくない」(同氏)。

 その解決策の一つとして考えられるのが、健康を失う前に「気付き」を与えること。DeNAでは、健診の結果を反映させることで、将来病気になるリスクを提供する「ひさやま元気予報」を提供している。疫学研究で世界的にも有名な福岡県久山町の統計データに基づき、個人の健康状態と生活習慣から病気になる予測をして、警鐘につなげるものである。南場氏はこうした取り組みを紹介しつつ、「自分の特性から疾病リスクが分かれば、多少、注意ができるようになるのでは」との考えを示した。

 アフラック生命保険 執行役員の森本晋介氏も、「個人にがんについて自分事化してもらうことは大切だ」と同調する。実際、同社ではがん保険の事業に長年携わってきた中で、がんになった加入者の声を数多く聞いてきただけに、その言葉には重みがある。「現場感覚として、多くの人の“思い”についての知見がある」(同氏)。

 その多くの人の「思い」を、どう自分事化してもらうことにつなげるか。例えば同社は、がん保険事業を通じ、給付に関する膨大なデータの蓄積を持つ。個人の自分事化を促すために、こうしたデータを活用できるかもしれない。森本氏は「お客様や社会のために(データを)どう生かしていくのかは、今後の課題だ」とした。