Beyond Healthが実施した円卓会議「健康人生100年の世界を実現するために『がんスクリーニング』を考える」。テーマ1に続く議論テーマは「異業種連携・新たなプレーヤーの参画」。がんの早期発見に向けた新たなスクリーニング技術の開発やその社会実装に向けては、これまで直接的に医療やがん分野に携わっていたプレーヤーだけでなく、幅広い業種・業界の知恵の結集が必要になる。異業種連携の意義や新たなプレーヤーの役割とは──そんな視点での議論が繰り広げられた(参加した有識者はこちら)。

第2の議論テーマは「異業種連携・新たなプレーヤーの参画」(写真:剣持 悠大、以下同)
第2の議論テーマは「異業種連携・新たなプレーヤーの参画」(写真:剣持 悠大、以下同)
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 がんスクリーニング領域などへの新たな事業展開を進めているアフラック生命保険とディー・エヌ・エー(DeNA)。まずは両者による取り組みの紹介と、その狙いの説明から議論がスタートした。

 1974年に日本初の「がん保険」の販売を開始したアフラック。同社が今、新たな取り組みとして着手しているのが、多様な領域の企業などとの協働による「キャンサーエコシステム(Cancer Ecosystem)」の構築だ(関連記事:協働による「キャンサーエコシステム」で、がんにトータルで向き合う)。

 キャンサーエコシステムは、がんに対してトータルの「線」で挑んでいこうというもの。これまでのがん保険の事業は、主にがんの治療時という「点」での関わりだった。それに対して今後は、がん検診受診率の向上といったがんの早期発見やがんに関する啓発活動に加え、がん予防、医師とのコミュニケーション、治療の多様化への備え、クオリティーオブライフ(QOL)の維持・向上、がんになっても治療を続けながら働く、などトータルに関わっていくことを目指している。

 長年、がんと向き合ってきた同社だからこそ、蓄積してきた知見や加入者の声などを踏まえ、社会に提供する価値の範囲を広げていこうという取り組みである。ただし、それに向けては同時に、様々なステークホルダーとの協働も不可欠になる。同社 執行役員の森本晋介氏は「『線』としての取り組みは、1社単独ではできない。多様な領域の方々と協働して、どんなサービスを提供できるか考えている」と語る。実際、ここ数年で一気に協働を加速している状況だという。

 一方、DeNAが開発を進めているのは、少量の血液からがんを早期発見する検査システム。深層学習などの技術に強みを持つPreferred Networks(PFN)との合弁企業PFDeNAにおいて手掛けている(関連記事:がんを早期に発見する検査を広く社会に提供する)。

 目指しているのは、「毎年多くの人が受診する人間ドックなどの健診の場で、オプション検査として利用されるものにする」「侵襲性の低い1回の血液検査で、少量の血液から検査できる」「複数のがん種を十分な精度で見極められ、妥当な価格で提供する」という3点。現在は、社会実装に向けて想定される課題の解決に、一つひとつ向き合っている最中だという。

 同社 代表取締役会長の南場智子氏は、こうした検査を社会実装する上では、一般消費者に正しく理解してもらうことも重要だと語る。そのためにも、「医療現場との密なコラボレーションが必要と考えている。実際、課題も含め洗いざらい共有して進めている。一般消費者や受診者にどう説明するのかについても、医療関係者と協力しながら作り上げている」(同氏)と強調した。

いくら優れた技術でもコストが高すぎては…

 アフラックとDeNAの取り組みは、いずれも異業種連携が一つの柱と言える。パートナーとなる企業と連携を図る上では、どんな点を意識しているのか。

議論の様子
議論の様子
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 アフラックの森本氏は、「価値観の共有」が重要だとする。「ありがたいことに、連携相手については先方から声を掛けていただけるケースも多い。その際に大切にしているのは、『真剣にがんに関わる社会的課題を解決したい』という根っこにある価値観を共有できるかだ」(同氏)。

 DeNAは、がんの早期発見システムの開発をPFNと共同で手掛けているが、それぞれが強みを持つ部分に役割を明確に切り分けた上で連携を図っているという。「DeNAは、テック企業の中でもサービス寄り、事業家寄りと考えている。技術面でのカギの一つであるAIの部分はPFNさんに担っていただき、私たちは社会実装に向けて汗をかく」と同社の南場氏は語る。

 この社会実装という観点は、キャンサーエコシステムの構築を進めるアフラックも強く意識している部分だという。「(いくらエコシステムを構築しても)利用者にアクセスできないと作り上げたサービスは広がらない。その社会への浸透の壁は常に意識している」と同社の森本氏は言う。例えば、「いくら優れた技術でもコストが高すぎては実際に利用者に届けられない」(同氏)といった点も、様々な企業との連携を進める上では重視すべき部分だとする。

 アフラックにとって、キャンサーエコシステムで構築したサービスの社会への浸透を進めていく際の強みの一つになりそうなのが、同社の保険代理店ネットワークや、提携先ネットワークなどである。「(キャンサーエコシステムで作り上げたサービスに)こうしたネットワークにアクセスできるようになれば、広がりも出てくる」と森本氏は展望する。

「新たな企業が参画するのは心強い」と歓迎するワケ

 アフラックやDeNAに限らず、がんスクリーニングなどの領域には新たなプレーヤーの参画が相次いでいる。その動きについて、医療現場はどう見ているのか。

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 国立がん研究センター 理事長の中釜斉氏は、「こうした領域にアフラックやDeNAなどといった企業が参画するのは心強い」と歓迎する。「様々なステークホルダーが関わってこなければ、次のステップへの扉を開いていけない。それほど複雑な状況になってきているのも事実」(同氏)と語る。

 実際、早期スクリーニング技術は、「がん医療を次のステップに進めるため必ず取り組むべき研究テーマ」(中釜氏)であるものの、公的研究費だけでは取り組みづらいテーマでもあるという。「医療現場での有用性を証明するためは前向きに調べ、長期にフォローアップをした上で死亡率などのアウトカムを確かめる必要がある。つまり、時間がかかる。競争的かつ短期的な公的研究費では対応しづらい面がある」(同氏)。

 こうした点も、多くの企業の参画を期待する理由の一つというわけだ。「前向きに調査できる検体の収集システムや品質管理、長期にフォローアップできる体制など、様々なステークホルダーが協力して、オールジャパンで進めていく必要がある」と中釜氏は強調する。そのために「医療現場と企業は情報を共有し、協調しながら開発していくことが重要だ」(同氏)とする。

 がんの早期発見システムの開発を進めるDeNAの南場氏も、医療現場との密な連携は最重視している点だと繰り返す。「『“ゲーム屋”が何やっているんだ』という目で周囲から見られないように、連携している医療機関に厳しく指導いただきながら、慎重に進めているところだ」(同氏)とした。

(タイトル部のImage:剣持 悠大)