「過剰診断」の判断には社会的なコンセンサス形成が必要

 早期スクリーニングによって必要以上に多くの人を精密検査に送り込み、結果として医療現場の負荷を高めてしまう、いわゆる「過剰診断」。これをどう考えるかについても、スクリーニング技術の社会実装に向けては避けて通れないポイントだ。中釜氏も「過剰診断は重要かつ難しい問題だ」と言う。

議論の様子

 偽陽性の患者が増えるほど、実際はがんではない患者に精密検査をしなければならない。医療費の問題も出てくる。「がんの難易度にもよるが、どのくらいの偽陽性まで許容できるかは、データをそろえながらコンセンサスを得て議論していくしかない」と中釜氏。

 膵臓がんのように罹患率が低いがんでは、特に偽陽性の問題が顕著になるという。例えば、罹患率を0.03%(10万人に30人罹患)と仮定し、感度95%、特異度95%のスクリーニング検査を20万人に実施したと仮定する。この場合、検査で陽性となるのが1万54人、そのうち57人(約200人に1人)からしか膵臓がんを発見できない計算だ。

 一方、現在の大腸がん検診(便潜血検査)は、1000人受けると約60人の陽性者が出る。そして、60人が精密検査(大腸内視鏡検査)を受けると、約2人の割合でがんが確認されるという。この2/60という割合について中釜氏は「それほど過剰だとは思わない」と見る。大腸内視鏡検査がさほど侵襲性を伴うものではない、というのがその理由である。

 つまり、精密検査の侵襲性の高低も、過剰診断の問題を考える上では重要な要素になるというわけだ。仮に、すい臓がんの精密検査がMRIや低線量CTなど患者の負荷が低い検査で実現できるようになれば、前述のようにたとえ1/200の発見確率であったとしても、「それを高いと思うか低いと思うかについて、社会的なコンセンサス形成の段階に入っていって良いのでは」と中釜氏は展望する。