「どこでも作れる」技術でコスト低減

 パートナー企業との協業では、ツールのコストも大きな課題となる。ZOZOSUITのハードウエアとしてのコストは同社自身にとっても課題となってきた。同社では従来品の大量配布を開始した2018年4月以降、精度向上に向けたソフトウエアの改善に加えて「ハードウエアに当たる着用するスーツに関する開発もそれほど経たない時期に始めており、今回の新型スーツは2年以上開発してきたことになる」(伊藤氏)。

 「旧製品では、マーカーに伸びない白いインクを使っていた。通常、アパレルに使われるのは(生地に合わせて)伸びるインク。生地に直接印刷して硬化できるインクは市場になく、自社で調合しなければならなかった。また、ZOZOSUITは最大で身長2.1m程度まで対応していたが、身長2.1mともなると脚の長さは1m以上になる。それだけ大面積の生地にスクリーン印刷できる印刷機は特殊なものしかなかった。つまり、決まった工場、決まった工程でしか作れず、サプライチェーンが限定されてしまう。原価を下げるのも難しかった」(伊藤氏)

伸びないプラスチックフィルム製のスケールマーカー。胸1点と背中の2点、脚の両ひざに1点ずつの合計5点を配置する(撮影:加藤 康)

 「ZOZOSUIT 2はサプライチェーンの限定という課題を解消し、簡単にどこでも作れるようにしたいと考えた。そこで、スクリーン印刷ではなく、サッカーのジャージなどで広く使われる昇華印刷を採用した。中国、ASEANなどの一般的な繊維サプライチェーン、普通のアパレル工場で作れる。そのため、10着といった少量生産にも100万着規模の量産にも対応できる。また、一般的な生地代と印刷代で作れるのでコストは下がる。量産の規模により異なるので明言するのは難しいが、例えば230万枚といった大量生産であれば、(1枚当たりのコストは1000円としていた)旧製品に比べて数割下げられると見込んでいる」(伊藤氏)

 ただし、昇華印刷によるマーカーは伸びてしまうため、長さの絶対値が求められない。そのため、胸1点と背中の2点、脚の両ひざに1点ずつ、プラスチックフィルム製の「スケールマーカー」を配置することで、長さを求められるようにしている。

同様の柄が右腕にもあるが、これは縫製時に右腕と左腕のパーツを識別するための印刷による柄(撮影:加藤 康)

 また、今回の技術ではズボンだけ、腕だけといった“部分的な利用”も可能だ。例えば、マーカーによる模様をワークアウトウエアの見たい筋肉の部分だけに印刷することができる。トップスだけ、ブラジャーだけといった形にすれば、生地代、縫製代も抑えられるので価格は飛躍的に下げられるとする。