オーダーメイドインソールの加工をデジタル化

 同社が医療やヘルスケアといった分野に注力し始めたのは、10年ほど前のことだと言う。2006年設立の同社は、顧客からの「足のサイズ計測機が欲しい」という声に応えて、片足につき約3万点を約15秒で計測するレーザー方式の「三次元足型自動計測機」を開発。スポーツシューズメーカーで採用されるなど、スポーツ分野での小売りなどにおいて活用されてきた。ところが2008年のリーマンショックにより期待した小売りが低迷したことで、余儀なく方向転換を迫られる。そこで目を付けたのが医療分野だった。

 同社はまず、代表的な介護シューズメーカーである徳武産業と協力し、介護シューズの販売に向け、計測した三次元データに基づくシューズマッチングシステムを実用化した。介護施設などでは高齢者でも着脱しやすく歩きやすい「介護シューズ」を利用する場合があるが、着用者本人に着用感を確認するのが難しいケースがあり、サイズが小さすぎることを懸念して大きめを選ぶ傾向があるという。大きすぎる介護シューズは転倒を招き、さらには寝たきりにつながりかねない。三次元足型自動計測機を使えば定量的に足の大きさや形を見極め、適したサイズの靴を用意することができる。徳武産業では全国で100台以上の三次元足型自動計測機を用意して介護施設などを回り、フィッティングをデジタル化している。

 もう一つ、着目したのが医療系インソールだ。保険適用が可能な医療系インソールは、整形外科などで医師の処方により義肢装具士がオーダーメイドで作成する。従来の医療系インソールでは、元となる足型を把握するために「トリッシャム」と呼ばれる発泡素材をユーザーに踏んでもらい、できた足跡に石膏を流し込んでユーザーの足のコピーを作って、そこに材料を重ねてインソールを作成するという方法が広く採用されている。ただしこの方法では足型の採取や石膏の流し込みなどに時間がかかり、インソールの作成には数週間必要となる。

 そこでドリーム・ジーピーでは三次元足型自動計測機データを使ったインソール加工のデジタル化を実現した。要となるインソール設計について、義肢装具士の意見を集めながらインソール設計ソフトウエアを開発した。三次元足型自動計測機による足の3Dデータから足長や足囲などの数値が自動で反映し、矯正として変更する部分や利用する靴側の仕様により決まるインソール厚みなどの仕様を数値で指定すると、最適な表面カーブなど、インソールの表面形状をCADデータとして自動で設計する。

足の3Dデータからインソールの表面形状をCADデータとして設計(右パソコン)、さらにNC工作機向けのCAMデータに変換する(左パソコン)(撮影:Beyond Health)

 さらに、そのCADデータをNC工作機向けのCAMデータに変換して切削機で自動加工する仕組みを整え、インソールを自動で切削する専用の切削機器も用意した。表面材を貼り合わせるなどの仕上げには手作業が必要だが、全体としては手作業工程を大幅に削減し、作成時間の短縮を実現した。通常納期は1週間とするものの、最短では1~2時間での対応も可能とする。

 現在、インソールの設計や加工を行う場所は限られているが、足型の計測結果自体は“データ”なので、どこで計測しても瞬時にデータを送付し、インソールの設計・加工作業に取り掛かることができる。実際に、同社のインソール加工部門には、日本各地の整骨院などに設置された三次元足型自動計測機から計測データがオンラインで送られ、利用する靴や表面仕上げなどの仕様を指定するオーダーシートに従って次々とインソールが加工されていく。三次元足型自動計測機と同社はインターネットで接続されており、計測機の稼働状態も把握できるとする。

CAMデータを基に切削機で自動加工する。計測後その場で作成できるよう、店頭などに設置できるタイプの切削機も開発中だ(撮影:Beyond Health)

 同社では作成したオーダーメイドのインソールに関する効果検証も行っている。例えば2018~2020年にかけて、三井化学 名古屋工場で三次元足型自動計測機を使い、適正サイズの安全靴にオーダーメイドインソールを組み合わせて着用する実証実験を行った。工場で課題となる転倒防止に向けた取り組みの一環で、108人を対象とした。従来の安全靴について、モニターのほぼ全員が着脱しやすいように1~2サイズ大きい靴を選んでおり、さらに約3/4が紐をゆるく締めていたという。実験の結果、転倒防止への直接的な効果は確認できなかったものの疲労軽減効果があったという。「適正サイズの靴とインソールを利用した結果、裸足状態でのバランス力向上といった効果も確認できた」(ドリーム・ジーピー 代表取締役の荒山元秀氏)。