問題は「筋肉」にあった、量と質の低下がもたらす代謝異常

 それにしても、やせているにもかかわらず、どうしてメタボと同じ代謝異常が起きるのか。田村先任准教授によると、問題は「筋肉」にあるという。筋肉の“量”と“質”が低下し、代謝異常を招いているというのだ。

 そもそも筋肉は体の中で糖を貯蔵する最大の臓器だから、筋肉量が少ないと十分な量の糖を取り込めず、血糖値が上がりやすくなる。では、筋肉の質はどうだろう。田村先任准教授は、筋肉の質の低下には「脂肪筋」と「筋肉のインスリン抵抗性」が関わっているとして、次のように続ける。

 「脂肪筋というのは、筋肉の細胞に脂肪がたまった状態を指す。脂肪細胞から漏れ出た遊離脂肪酸が筋細胞に過剰に蓄積したもので、いわゆる異所性脂肪と呼ばれるものだ。この異所性脂肪は筋肉の細胞の中で毒性を発揮し、インスリンの効きを悪くする作用がある。こうして筋肉のインスリン抵抗性が生じ、耐糖能異常につながったと考えられる」

 脂肪筋や筋肉でのインスリン抵抗性のために、本来筋肉が持つ働きを十分に発揮できない。それが筋肉の質が低下した状態というわけだ。このような筋肉の質の低下は、運動不足や低体力、高脂肪食、体脂肪率が高めの人に起こりやすいという。また、脂肪肝やごく軽い肝機能(ALT)異常、中性脂肪値の上昇などがある場合は、すでに筋肉のインスリン抵抗性が生じている可能性があるそうだ。心当たりのある人は要注意。これは、やせた若年女性に限らない。

筋肉のインスリン抵抗性と代謝異常のメカニズム
糖と脂肪の代謝異常は、「筋肉」から始まると考えられる。運動不足や高脂肪食、体脂肪率上昇などから筋肉に脂肪がたまる“脂肪筋”になり、筋肉でインスリン抵抗性が生じる。これが筋肉の質が低下した状態。この状態で糖質をいつも通り摂取すると、今までは筋肉で摂り込まれていた糖が肝臓に流れ、肝臓内で中性脂肪が新たに合成されて、脂肪肝を招く。また肝臓内の糖や中性脂肪が血中に流れ出すと、血糖値や中性脂肪値の上昇を招く。この悪い流れを断ち切るには、運動で筋肉の量と質を改善するのが本質的、かつ重要だという(資料提供:田村氏)
こんな人は筋肉の“質”が低下している可能性が
(脂肪筋&筋肉のインスリン抵抗性チェック)
  •  運動不足
  •  低体力
  •  脂肪の摂り過ぎ
  •  体脂肪率が高め(男性20%以上、女性25%以上)
  •  血糖値が高め
  •  血中の中性脂肪値が高め
  •  脂肪肝(軽度も含む)
  •  肝機能異常(ALTが正常範囲内だが、ちょっと高め)