若いうちから運動に親しむ環境づくりを

 また、できるだけ若いうちから運動に親しむような働きかけをしていくことも重要だという。糖尿病予防は大人になってからではなく、子どもの頃から対策を講じた方がずっと効果的だからだ。

 「欧米では糖尿病予防のターゲットは肥満者だが、近年はより若い層へとシフトし、子どもの肥満を防ぐことで糖尿病を予防しようという動きが広がっている。例えば、ソフトドリンクの販売機を学校から撤去する条例を作ったり、甘い炭酸飲料に課税するソーダ税を導入したりして、子どもの肥満を減らそうとしている。このように日本でもより早い段階から女性のやせ問題に取り組み、将来の糖尿病予防につなげていく必要がある。例えば、運動習慣もその一つ。現在の中学校や高校の部活は競技スポーツが中心で練習が厳しい傾向があるが、そういったものとは別に、ウォーキングやヨガといった軽めの運動を楽しく行える部活があってもいい。若い頃の運動経験は長い目で見ると、生涯を通した運動習慣になる可能性がある。これはスポーツ庁から平成30年に出された『運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン』でも強く指摘された点で、すでに“ゆる部活”として導入している学校もある」

 運動は、肥満だけでなく、やせにも効くのだ。

 生活習慣病は、生活習慣の歪みと遺伝的素因が合わさって発症する。やせた若年女性の場合、やせ過ぎや低体力、運動不足といった要因が体にとって“負荷”となり、遺伝的素因が表に出やすくなっているのではないかと、田村先任准教授は推察する。

 「太っていても糖尿病にならない人がいるように、やせた若年女性が必ずしも全員、耐糖能異常を起こすわけでもない。やはりそこには遺伝的な素因の有無が関係しているようだ。やせた若年女性の耐糖能異常は、やせとエネルギー低回転型の状態が負荷となって、もともと持っている遺伝的な弱さが若くして炙り出された結果と言えるのかもしれない。不健康なやせは、体にとって大きな負荷になる。そのことをしっかり認識しておく必要があるだろう」

 若い女性のやせは、耐糖能異常や糖尿病だけなく、月経異常や不妊、将来の骨粗鬆症やフレイル、さらには寝たきりのリスク増など、女性のライフステージ全般にわたって弊害をもたらす。また、やせた女性が妊娠すると、生まれてくる子が低体重になりやすく、次世代の健康リスクを高めるという報告もある(関連記事:若い女性の「やせ対策」が急務なワケ )。

 若い女性のやせ対策が、女性の一生、さらには次世代の健康をも左右するといっても過言ではないのだ。

田村 好史(たむら・よしふみ)
田村 好史(たむら・よしふみ)
順天堂大学大学院医学研究科スポートロジーセンター・代謝内分泌内科学先任准教授。同大学国際教養学部グローバルヘルスサービス領域教授。1997年、順天堂大学医学部卒業。カナダ・トロント大学生理学教室留学、順天堂大学医学部内科学代謝内分泌学講座准教授などを経て、2017年から同大学国際教養学部グローバルヘルスサービス領域教授、2020年から同大学大学院スポートロジーセンター・代謝内分泌内科学先任准教授。専門は糖尿病、インスリン抵抗性、異所性脂肪、肥満、糖尿病の運動療法など。2016~2018年、スポーツ庁参与も務める
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(タイトル部のImage:Getty Images)

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女性のやせがもたらす健康、社会への影響とその解決策を26人の専門家への取材と80を超すデータをもとに解説。女性の労働生産性の低下、生活習慣病増加、少子化対策、医療費の増大……「若い女性のやせ=シンデレラ体重」は今、最も重要な社会課題の一つです。

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