生活習慣病になりやすい低出生体重児の削減が急務

 ではなぜ、妊婦の体重制限を緩める必要があったのだろう。

 背景には、日本は2500g未満で生まれる低出生体重児の赤ちゃんの割合が突出して多いという事実がある。小さく生まれる日本の赤ちゃんの割合は、経済協力開発機構(OECD)の加盟国の中でギリシャ(9.6%)に次いで高く(9.4%、2018年)、先進国の中で断トツ。それも05年以降、15年にわたり9.5%前後という状況が続いている(図1)。新生児の10人に1人が低出生体重児というわけで、その大きな要因の一つが、「妊婦を指導する現場での、妊娠中の体重制限が厳格だからではないか」と以前から指摘されていた。

図1●10人に1人が低出生体重児という日本
図1●10人に1人が低出生体重児という日本
2500g未満で生まれた低出生体重児の割合は、グラフでは省いているが1975年は5.1%だった。その後増加に転じ、2005年には9.5%に。以来、9%台が続いている(厚生労働省「人口動態統計」を基に作成)
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 「今回の数値作成の目的の一つは、先進国の中でも多い我が国の低出生体重児を減らすことだった。イギリスなど海外のデータでは、低出生体重児は、4000gで生まれた巨大児よりも将来、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病になるリスクが高い。もともと小柄な日本人の場合、巨大児も将来糖尿病などになるリスクは上がるが、その出生割合は新生児の0.7~0.8%と少ない。これまでの国内外の研究から、低出生体重児を減らす必要性が指摘されていた」と板倉教授は強調する。

 そして、厳しい体重管理指導が行われていた背景について、「日本産科婦人科学会が当時妊娠中毒症と呼ばれていた妊娠高血圧症候群を減らすために1997年に出した妊娠中の体重増加指標(前ページの表参照)があるが、これに則って妊婦さんに厳しい体重制限をする医療機関が増えたためだと考えられる」と指摘する。

 今回、妊婦約42万人のデータを分析したことで、新たに分かってきたこともある。板倉教授によると、それは、「BMI30以上の肥満の女性以外は、強い体重制限をしなくても、巨大児、緊急帝王切開、妊娠高血圧症候群などのリスクはそれほど増えない。また、妊娠糖尿病の人は個別対応するため、巨大児の増加は抑えることが可能と考えられるので、それ以外の人は体重制限を厳格にする必要はない」ということだ。

 もともとやせている人や標準体重の人が低出生体重児の出産や早産を防ぐためには、妊娠中の体重を制限するどころか、むしろ積極的に増やす必要があることも分かってきている。