予定時間を大幅に過ぎてやっと終わった会議。あと5分で次の会議が始まってしまう。今日は生理2日目なのに、会議の前は準備にバタつき「次の会議との間の30分間に交換すればいいや」とトイレに行かなかった。今使っている生理用ナプキンは4時間前に替えたものだ。このままでは次の会議の途中に経血が漏れてしまうのではと不安が過るが、ナプキンを取りに自席に戻っている暇もない。意を決して「多少遅刻しても仕方がない」と自席に戻ると、引き出しに入れておいたはずのナプキンがまさかの在庫切れ。もう会議も始まってしまうし、ナプキンを借りようにも同僚も皆、会議室に行ってしまった後。一体どうしよう──。

 就業上での月経に関する問題の代表例は「生理休暇」だが、月経そのものに困難を感じていなくても何かと“働きにくさ”を感じている女性は少なくないのではないだろうか。その一つが、経血を吸収させるための生理用品の交換タイミングだ。広く利用されている生理用ナプキンの場合、1~3時間に1回はトイレに行って交換したいところだが、会議に外回り、電話応対、立て込む作業…と時機を逸し、5~6時間交換しないままなんてこともしょっちゅう生じる。服のポケットにいくつもの生理用ナプキンを押し込んでおく訳にもいかず、ナプキンポーチを持ち歩くのも人目が気になる。こうした事情を見越して、昼こそ長時間対応の「夜用ナプキン」を使うという女性も少なくないが、蒸れやニオイも気になって快適とは言い難い。

 現在、こうした女性の月経にまつわる課題の解決策として、生理用品を無償でトイレに設置する動きが始まっている。2013年にNancy Kramer氏(デジタルエージェンシーである米Resource/Ammiratiの創設者、同社は2016年に米IBMが買収)がTEDで講演し「Free The Tampons Foundation」を立ち上げたことなどをきっかけに、欧米など海外を中心に盛り上がってきた。仕組みの社会実装に向けて、企業や学校などに生理用品用ディスペンサーや補充用生理用品などを提供する米Aunt Flowのような企業も登場している。

 従来、日本でも利用客や従業員の利便性を高めようと、女子トイレに生理用ナプキンの入ったカゴなどを設置するケースがあった。この段階から一歩進み、無償設置したい企業に向けてサービスとして提供する企業が出始めた。そのうちの1社が、オフィス・学校向けの無償生理用品提供サービスの開発を進める、わたしの暮らし研究所だ。代表の沢田直美氏が中心となり、従業員や生徒への無償提供に向けて生理用ナプキンの設置を推進する「LAQDAプロジェクト」を進めている。

 わたしの暮らし研究所では、IoT(Internet of Things)を活用した生理用ナプキンのディスペンサーの開発、普及に力を入れている。2019年11月には、渋谷PARCOの実証実験特化ショールーム「BOOSTER STUDIO by CAMPFIRE」(以下、BOOSTER STUDIO)オープンに伴い、同社が開発を進める生理用ナプキンディスペンサー「LACDA」(当時、後に名称を「LAQDA」に変更)の試作機が展示された。在庫切れ時にスマートフォン(スマホ)に通知が来るといったIoT機能を備える発想が「近未来の日用家具」として注目を集めた。

わたしの暮らし研究所が開発した生理用ナプキンディスペンサー「LAQDA」。写真は「DMM.make AKIBA」での実証実験に用いたタイプ(撮影:加藤 康)

 さらに改良を加え、低コストで実現できるPoC(Proof of Concept)モデルとしてのLAQDAを開発、2021年5月にモノづくりのためのコワーキングスペース「DMM.make AKIBA」のトイレに設置して実証実験を行った。利用者が自分のスマホ(スマートフォン)にダウンロードしたディスペンサー操作用アプリから操作すると、1個の生理用ナプキンがディスペンサーから吐出される。施設利用者であれば無償で生理用ナプキンを利用できる。