毎月のつらさだけでない、病気の発症リスクも高める月経

 月経回数の大幅な増加は、多くの女性に負担増を強いる。なぜなら、「そもそも月経は体にやさしくないから」と百枝部長。その理由は大きく3つあるという。

 1つは、月経には特有の不調(月経随伴症状)が伴うことだ。その代表が月経痛と「PMS(月経前症候群)」。月経痛は個人差が大きいが、鎮痛薬が必要なほど痛みがひどい場合は「月経困難症」とみなされる。月経困難症では月経痛に加え、腰痛や頭痛、便秘、下痢、吐き気、情緒不安などが同時に起こることもある。一方、PMSでは月経が始まる3~10日ほど前からイライラや情緒不安、気分の落ち込み、眠気、集中力の低下、頭痛、腹痛、乳房の張り、むくみ、肌荒れ、過食といった多彩な症状が出現する。

 「程度の差はありますが、月経がある女性の6~7割が月経痛やPMSを経験しています。月経困難症に該当するのは約3割で、仕事や家事などの日常生活に支障を来している人も少なくありません。PMSも生活に影響が出るほど症状の重い人が約2割います。なかには月経痛とPMSの両方があり、1カ月の3分の2は症状があってつらいというケースも。月経回数が増えれば、そういった月経に関連する負担やつらさも自ずと多くなります」

 そして月経が体にやさしくない2つ目の理由は、病気の発症リスクが上がることだ。月経が原因で婦人科系の病気を発症したり、将来の健康を脅かしたりする可能性がある(図2)。

図2●女性のライフステージにおける月経関連疾患
図2●女性のライフステージにおける月経関連疾患
10代で初経が始まり、50歳前後で閉経を迎えるまでの約40年間、女性は女性ホルモンと共に生きる。月経も女性ホルモンの働きによって起こり、子宮内膜症や子宮筋腫、過多月経、月経不順など、さまざまな不調や病気を招くことがある。不調や病気が合併することも珍しくない。各数字は月経がある女性に占める、おおよその割合とそれを基にした患者数の概数(資料提供:百枝部長)
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 例えば月経困難症は月経時につらいだけでなく、約3人に1人は子宮内膜症を発症する。子宮内膜症は、本来子宮の内側にあるはずの子宮内膜組織が子宮の外側の卵巣や腹腔内に飛び火し、月経のたびに飛び火した先でも増殖と剥離を繰り返して強い痛みを引き起こす。月経時にはほとんどの場合、子宮から腹腔内へと経血の逆流が起こっており、この逆流が子宮内膜症の引き金になるといわれる。月経回数が多いほど逆流回数も増え、子宮内膜症になる可能性が高まるわけだ。

 「子宮内膜症があると月経痛自体も強くなりますが、それに加えて将来、妊娠時のトラブルや不妊症、卵巣がんになるリスクが上がることもわかっています。さらに最近では、婦人科疾患とは一見関係のない狭心症や心筋梗塞などの心血管系疾患の発症リスクまで上がるとの報告もあります(図3)。子宮内膜症によって起こる腹腔内の慢性的な炎症が、血管にも影響を及ぼしているのではないかと考えられています」

図3●月経困難症から始まる疾患カスケード
図3●月経困難症から始まる疾患カスケード
月経困難症だと子宮内膜症になるリスクが上がり、子宮内膜症になると不妊症や卵巣がん、さらには心血管系疾患の発症リスクが上がると報告されている。数字は、月経がある女性に占める割合(%)、ハザード比(HR)、オッズ比(OR)を示す(資料提供:百枝部長)
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