日本の赤ちゃんは世界の中でも睡眠不足

日本人の平均睡眠時間は、確保すべき最低ラインを切ってしまっているんですね。乳幼児期も睡眠時間が短いのでしょうか。

 研究者の岡田(有竹)清夏氏による「乳幼児の睡眠と発達」(※6)という論文には、「Mindellらが行った17の国と地域における0歳から3歳までの乳幼児を対象とした睡眠習慣についての国際比較によると、1日あたりの総睡眠時間が最も短かったのは日本(総睡眠時間:11.62時間)であり、次いでインド(11.83時間)、韓国(11.90時間)、台湾(12.07時間)、香港(12.16時間)とアジア諸国が占めていた(Mindell et al.,2010)」と示されています。

 つまり日本の赤ちゃんの睡眠時間は17の国と地域で最下位だったのです。ちなみに米国の総睡眠時間は12.93時間、最も長かったニュージーランドが13.31時間でした。この研究結果から11年が経ちますが、状況は大きくは変わってないでしょう。

 問題は、睡眠時間が短いアジア諸国の乳幼児の中でも、日本は夜だけでなく、午睡(お昼寝)時間も短いことです。大人も睡眠不足が常態化していますし、睡眠の優先順位が高い人が少ないですよね。「24時間働けますか」というマインドがあるのではないかと感じます。

睡眠時間を削ることを美徳とする傾向はまだありそうですね。親の就寝時間が乳幼児の睡眠時間に影響することはありますか。

 私自身も身に覚えがあるのですが、子どもを寝かせるときに、自分も一緒に寝てしまおうと考えるがために、寝るまでの間、子どもを親と同じ明るいリビングで過ごさせてしまい、子どもの就寝時間が22時、23時など遅くなるケースがあるのではないでしょうか。就寝時間が遅くなった分、起床時間を遅らせたいと思っても、親が仕事に行くのに合わせて子どもも起こさなければならないとなると、必然的に睡眠不足になります。

 また、子どもを寝かせようとしても、人には明るくなると目を覚ますという機能が備わっています。これは体内時計によるものです。体内時計(生物時計)の主な部分は脳内の視床下部の視交叉上核に存在しますが、24時間よりも少し長いサイクルで概日リズム(サーカディアンリズム)を刻んでいるため、通常の時計とずれが生じるのです。それを「同調因子」によって合わせている。つまり、目から強い光が入ると視床下部に信号が送られて、時刻が合わせられるようになっています。

 だから、どれほど遅く寝ても、明るくなると目が覚めるのです。就寝時間が何時であろうと、起床時間は世界的に朝の6時台という調査結果もありますが、これはそうした理由もあると考えられます。