歯ぎしりや食いしばりなどの行動の総称である「ブラキシズム」には、「睡眠時ブラキシズム」と「覚醒時ブラキシズム」がある。東京医科歯科大学病院歯科(歯系診療部門)の西山暁准教授によれば、特に覚醒時のブラキシズムが知覚過敏を引き起こしたり、歯周病を治りにくくしたり、あるいはかみ合わせや入れ歯の違和感に影響が出るという。
また子供はブラキシズムの保有頻度が多く、論文(※1)によると20代、30代前後では15%だが、それより低年齢だとさらに多くなるという。基本的には年齢が上がるにつれて少なくなっていくので過度の心配は不要ながら、「要因の 1つである睡眠時無呼吸症候群は、子供のほうが診断基準はシビアですので注意してみてください。またストレスに関しては、虐待や学校でのいじめなどが背景にある可能性もあります。さらに現在はデジタルデバイスなどのスクリーンを見る時間と睡眠時ブラキシズムの間に関連があるとの研究報告も最近出ていますので(※2)、総合的に見る必要があります」と注意を促す。
さらに西山氏は「覚醒時のブラキシズムは、顎関節症の要因になると考えています」という。実際、在宅ワークが増えたり、会話する機会が減ったりした人の中には、大きな口を開けてあくびをすると顎が痛い、あるいは口の開け閉めをするときに違和感があるなどの症状が現れたという人が増えているようだ。SNSを検索すると、「口を開けると顎が鳴る」「首や肩が痛い、顔全体が痛い」といった症状から「自分は顎関節症なのではないか」と懸念する書き込みも見かける。
では顎関節症とは何か。痛みはどのように生じるのか。受診の必要性を見分けるポイントは何か。あるいは他の病気につながることはあるのか。「前回」に引き続き西山准教授に話を聞いた。