顎関節症に関するネット上の情報は要注意

長時間のデスクワークの影響か、歯ぎしりや食いしばりなどブラキシズムを懸念し、インターネットで調べたところ、頭痛がしたり首が痛かったり肩が凝ったりといった症状がある人が、顎関節症を疑うようになっているケースが増えていると聞きます。

 一部のインターネットの情報では拡大解釈されているのではないかと思います。

 原則として顎関節症の症状が出る部位は、耳の前にあるアゴの関節(顎関節)と、アゴの筋肉(咀嚼筋)に出るもので、日本顎関節学会でも「顎関節や咀嚼筋の疼痛、顎関節雑音、開口障害ないし顎運動異常を主要症候とする障害の包括的診断名である」と定義しています。分かりやすく言えば、(1)「アゴが痛む(顎関節痛・咀嚼筋痛)」、(2)「口が開かない(開口障害)」、(3)「アゴを動かすと音がする(顎関節雑音)」の3つの症状(三大症状)のうち1つ以上があり、なおかつ他の病気ではない場合に診断されます。

 頭痛と感じるのは、咀嚼筋(咬筋、側頭筋、外側翼突筋、内側翼突筋、舌骨上筋群)のうちの側頭筋に痛みが生じることがあるからと考えられます。名前からすると、アゴの関節だけに症状が出るイメージになるかもしれませんが、実際にはアゴの関節に加えて筋肉にも症状が出る病気です。

口が開けにくく頭痛がするという場合でも、その頭痛が顎関節症由来とは言えないということでしょうか。

 部位によります。

 頭痛は他の病気によらない「一次性頭痛」と、他の病気による「二次性頭痛」という2つに分けて考えられています。一次性頭痛に多い片頭痛は、こめかみから目にかけて、片側を中心に脈打つように起こる頭痛のことで、40%のケースで両側に出ます。また脳の検査をしても異常が見つからず、特に10~50歳の女性に多くみられる症状です。

 二次性頭痛の要因は様々です。例えば睡眠時無呼吸症候群があっても頭痛の症状は出ますが、より重大な病気が潜んでいることもあります。ですから顎関節症を疑って受診した際にも、頭痛が主訴の場合は、他の要因がないか調べてみる必要があります。他の要因が排除され、側頭筋に痛みがある場合に、顎関節症による頭痛である可能性が考えられます。

「アゴが痛む」「口が開かない」「アゴを動かすと音がする」という症状を感じた場合、受診の目安はありますか。

 三大症状のどれかが1つ以上あることが、受診の必要条件ですが、どれかがあったら必ず顎関節症と診断されるとは限りません。例えば開口時痛は、親知らず、つまり第三大臼歯に被さった歯肉が炎症を起こし、腫れることによっても生じます。似たような症状を生じる病気があるため、問診や診察により除外していった後に、顎関節症と診断していくことになります。

顎関節症になると、どういった点が問題になりますか。

 顎関節症になることで、命に関わる症状が出るようになったり、日常生活を全く送ることができなくなるような障害が出るようなことはありません。ですから顎関節症になっても、慌てないことが大事です。

 私が診察したケースでも「今すぐ何かしなければ大変なことになるのか」「かみ合わせを治さなければ大変なことになるのか」と心配する方がいましたが、そうした疾患ではありません。

 直接的な影響は、食事と会話に出るでしょう。歌手であれば口が開かないこと自体が支障をきたしますし、管楽器奏者であれば顎に負担がかかるため演奏できなくなることが考えられます。もちろん食事がしづらくなれば栄養が十分に摂れなくなります。

 また歯科治療が難しくなるということもあります。