「ピンクの衣装を着て、濃いメイクをして、元気に足を上げて、踊って、その全員ががんサバイバー」。そのショーの様子に勇気付けられる人も少なくないという。運動を通して、がん患者の“幸せ”を支援する団体、キャンサーフィットネスはどうして立ち上がり、どんな取り組みを進めているのか。(小谷 卓也=Beyond Health)

*以降の内容は、2021年1月28日に掲載した記事の再録です。肩書・社名、事実関係などは原則、掲載時のままとしています。

「がん患者が運動なんてとんでもない!」

キャンサーフィットネス(東京港区)代表理事である広瀬真奈美氏が乳がんを発症した当時は、そんな意見が根強かったが、昨今、全面否定派はごく少数。むしろ適切な運動はQOLを向上させると言われており、キャンサーフィットネスでもこれまで多数のがんサバイバーに運動の機会を提供してきた。

しかし、昨年はコロナ禍でフィットネス教室を開くこともままならなくなった。そこでスタートしたのが会員制オンラインサロン。非対面ならではの利点を感じている会員も少なくないという。

退院してから気づかされた、がんで失ったもの

 今から12年前の2000年代の後半、広瀬氏は乳がんの術後の体調不良に悩まされていた。 

 「入院中は気を張っていたが、退院して”元の場所”に戻ると、喪失感に苛まれた。胸をなくし、腕はしびれて動かず、以前ならできていたことができない。今思えば仕方ないことだが、当時は受け入れがたくて落ち込み、精神科を受診したら適応障害と診断された。また新しい病名かと、どん底の気分だった」

 なんとか運動機能を取り戻したいと、広瀬氏は方々に相談するが、全て断られた。また、乳がん後の運動についてインターネットで調べても、情報は出てこなかった。「それならば自分で」と考えた広瀬氏はスポーツの専門学校に通い始め、生理学や運動学、身体の動かし方などを学んだ。抗がん剤治療を受けながら、エアロビクスや水泳の実習を受けるのはきつかったが、有酸素運動の有効性を検証した論文を読んでいたので、不安はなかった。しばらくして、自分でも驚くほど体調が改善し、運動の効果を実感した。

キャンサーフィットネス代表理事 広瀬真奈美氏(写真:吉澤 咲子、以下同)

 その後、米国にはがんサバイバー向けのフィットネス団体があることを知り、単身渡米する。そこで、年齢も病歴も多様ながんサバイバーが楽しく身体を動かす姿を見て、これを日本に持ち帰ろうと決意。後日改めて米国に渡り、認定指導者になるために必要な100時間に及ぶ全単位を取得し、試験に合格して晴れて承認を得た。

 しかし、当時はがん患者が運動なんてとんでもないという考え方が主流。医療関係者向けの講演会でキャンサーフィットネスの説明をしたところ、「どんなエビデンスがあって言っているのか」と厳しい声が上がった。

 「あまりに悔しくて『患者がこれだけ困っているのだから、先生方も一緒になって研究してくださればいいじゃないですか!』と言い返してしまったほど。それから少しずつ運動の重要性が認知され、リハビリとしての運動を支援する病院も出てきたが、まだまだこれからだと思う」