AIに認知機能が低下した人の顔を学習させる

 「私は仕事がら毎日のように認知機能が低下した患者さんと接しているので、症状が一定程度進行した方であれば、表情などから認知機能の低下を感じることはできます。しかし、ごく初期の方や軽度認知障害(MCI)の方まではさすがにわかりません」(亀山祐美氏)

 認知症は早期発見、早期介入することができれば、その後の進行を大きく抑制することができる。ただしそのあぶり出しは難しい。

 現在日本に900万人近くいると言われるMCIは、放置すればその半数が認知症に移行するとされる。ただ、自覚症状は少ない。MCIの段階では日常生活を苦なく過ごせる人も多いわけだ。

亀山祐美氏(本人提供)
亀山祐美氏(本人提供)
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 「普通に暮らせている人に対して、『今日は何月何日ですか』とか、『ここはどこですか』『100から7を引いてみてください』などの質問をすることは、ともすると相手の心を傷つけてしまうことがあります。また、アルツハイマーの原因といわれるアミロイドβの量を検査するアミロイドPETは非常に高額だし、脳髄液を採取する必要があるので身体への負担も大きい」(亀山祐美氏)

 心も身体も傷つけることなく、しかも簡単に検査することができれば未来は明るい。

夫婦の連携が結実

 見た目と実年齢の乖離に着目している亀山氏は、所属する東大病院・東京大学の倫理委員会を通し、個人情報の取り扱いなどをクリアにした状態で患者の顔写真の収集を続けた。

 「もちろんご本人やご家族の承諾も得たうえで、認知機能が低下した方121人とそうでない方117人の顔写真を採取しました。これらを素材に、画像解析などの技術を使って何かしらの診断ができないだろうかと考えました」(亀山祐美氏)

 ところが話を持ちかけた民間のメーカーからは「数が少なすぎる」と難色を示されたという。

 「そもそも写真データを大学外に持ち出すこと自体が倫理委員会の取り決めに抵触することもわかり、自前でなんとかするしかないと考え始めたところで、夫の征史が『AIのディープラーニング技術を活用できるかもしれない』と発案してくれたのです」(亀山祐美氏)