実用化は「シンプル機能で使いやすく」がカギに

 日本では健康で自立した生活を送れる「健康寿命」と「平均寿命」の差が9年以上に及ぶ点が課題となっている。そこで少しでも健康寿命を延伸しようと、適切な活動やトレーニングにより自立した日常生活維持に向けた自立支援型介護が2021年度介護報酬改定でも強化されるなど、“自立”が注目を集める。自立を実現する上で重要となるのが、日常生活行動の起点ともなる「歩行」だ。一方で高齢になるほど外出頻度が低下し、歩行の機会が減少することが明らかになっている。

 また従来、歩行能力が低下した人や歩行に障害がある人に向けたリハビリテーションとしての歩行トレーニング機器は多数存在しているものの、日常生活で利用することは想定されていない。リハビリテーション後や老化に伴い歩行に不安を感じる人に向けた機器は歩行を補助する歩行器などがあるが、日常的なトレーニングとして使える機器はほとんどない。同社ではこの点に注目し、今回の製品を開発したとする。

 同社では2015年からAIを活用した歩行トレーニングロボットの開発、実証実験を行ってきた。実証実験などを通じてユーザーとなる高齢者や施設スタッフの要望を調査し、シンプルで手軽に使えるよう、用途を施設での歩行トレーニングに特化して機能を絞り込むことで価格を抑えたほか、より使いやすいようにハンドルの自動昇降機能を追加したり小型化したりといった変更を施したとする。

同ロボットのハンドルは、太く握りやすい形状でヒジを載せて体を支えられる設計を採用している。音声ガイド等はなく、利用時は音楽が流れるのみ。トレーニング時の画面もシンプルで分かりやすいようにした(出所:パナソニック)
同ロボットのハンドルは、太く握りやすい形状でヒジを載せて体を支えられる設計を採用している。音声ガイド等はなく、利用時は音楽が流れるのみ。トレーニング時の画面もシンプルで分かりやすいようにした(出所:パナソニック)
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 実際にデイサービスセンターの利用者でほかに運動する機会を持たない要介護2の男女2人に9カ月間利用してもらったところ、歩行速度の改善などが見られたという。「こうした高齢者の場合、何もしなければ9カ月というわずかな期間でも要介護度は上がっていくのが一般的。それに対して、今回の事例では身体機能がわずかでも向上することが確認できた」(パナソニック テクノロジー本部 事業開発室 アクティブエイジングデザインプロジェクト 主幹の山田和範氏)。

 歩行トレーニングを継続的に続けてもらえたうえ、定期的に計測するため、日々の上下変動があっても長期間の傾向が読み取れることも確認できたという。このほか、実証実験では車椅子を利用していた人が同ロボットを見て「歩いてみたい」と歩行トレーニングにチャレンジしたり、転倒により車椅子を使っていた人が歩行に戻れたりする事例もあったとする。

 同サービスは受付を2021年4月27日に開始している。ロボットはサービス利用に伴いパナソニックからリースされる形となり、1台あたりの初期費用は25万円、月額サービス料は3万円(3年契約)、IDカード50人分を利用できる。利用検討に向けた試用サービスも行っている。

 今後は、歩行による認知症状の改善効果などに関して研究を進めていくほか、トレーニングのデータを家族に向けて見える化するサービスの改善や、個人向けの同様の製品、屋外向け製品などを検討しているとする。

(タイトル部のImage:出所はパナソニック)