老化細胞を除去して健康寿命を延ばす国家プロジェクトも始動

 中西教授がプログラムマネジャーを務める、内閣府のムーンショット型研究開発事業のテーマは、「老化細胞を除去して健康寿命を延伸する」だ。2040年には、老化細胞などの炎症誘発細胞を除去する技術を、がんや動脈硬化などの老年病や生活習慣病、加齢に伴う多様な臓器機能不全を標的とした治療として、社会実装することを目指している。また、老化度や老化速度を簡便に測れる検査技術を確立し、老化細胞除去薬の適応や効果を確認できる医療システムの構築も進めるという。

 このプロジェクトは、中西教授を筆頭に、肥満による糖代謝異常や動脈硬化、早老症などを改善する老化細胞除去ワクチンを開発中の南野徹・順天堂大学大学院医学研究科循環器内科学教授、微生物学・免疫学が専門の吉村明彦・慶應義塾大学大学院医学研究科教授など、様々な専門分野を持つ10人の研究者で進められている。老化細胞除去薬を実用化することで、老化による臓器や体の機能低下を抑え、健康寿命を大幅に延ばそうとする国家プロジェクトだ。現在の構想が実現すれば、年齢だけでは測れない人の老化度を簡単に測れるようになり、老化に伴う臓器や組織の機能低下やがん、動脈硬化などの病気の発症が抑えられ、高齢社会の到来で膨らむ医療費や介護費を削減できる可能性がある。

 「GLS1阻害薬は内服薬で比較的安い薬です。簡単に飲める安価な薬で老化に伴う病気を治療したり予防したりできるならそれに越したことはありません。また、私たちの研究グループでは、アルツハイマー型認知症など神経性疾患の制御につながる、別の老化細胞除去薬の創薬研究も進めています。現在、予防医療は保険診療ではありませんが、将来的に、保険診療が適用される老化予防薬として使えるようになれば、劇的な健康寿命の延びも期待できます。GLS1阻害薬などによる予防医療が実現すれば、多くの人が、ヒトの最大寿命である120歳まで元気に過ごせるようになることも、夢ではなくなるかもしれません」(中西教授)

図2●中西教授がプログラムマネジャーを務めるムーンショット目標の概要
図2●中西教授がプログラムマネジャーを務めるムーンショット目標の概要
中西教授がプログラムマネジャーを務めるムーンショット型研究開発事業のテーマは、「老化細胞を除去して健康寿命を延伸する」。老化測定技術の開発も研究テーマだ(出所:「教えて平野先生!ムーンショット目標7のこと」日本医療研究開発機構・AMED、ムーンショット型研究開発事業)
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