マウスへの接種で糖代謝異常や動脈硬化、フレイルが改善

 このGPNMBワクチンを高脂肪食で飼育したマウスに接種したところ、内臓脂肪に蓄積した老化細胞が除去され、食後血糖値が下がりやすくなり、肥満によって起こっていた糖の代謝異常が改善した(図2)。

図2●糖尿病モデルの実験結果
図2●糖尿病モデルの実験結果
高脂肪食を与えて飼育した中年マウスは、コントロール(マウスの写真左)のように内臓脂肪に老化細胞が蓄積。血糖値を下げるインスリンが出にくくなって、糖負荷試験でも血糖値が下がりにくくなる。老化細胞除去ワクチンを接種すると、老化細胞が除去されて蓄積量が減り(写真右)、糖代謝異常が改善された(出所:Nature Aging 1, 1117-26,2021)
[画像のクリックで別ページへ]

 また、動脈硬化モデルマウスにこのワクチンを接種した実験では、動脈硬化巣に蓄積した老化細胞が除去され、血管を狭くしているプラークの軽減も確認された。この他、早老症の中でも症状の重いハッチンソン・ギルフォード症候群のモデルマウスにワクチンを接種すると、平均寿命が明らかに延びた。この早老症モデルマウスは、ワクチンを接種しなければ長生きしたとしても30週齢くらいで全例死んでしまうが、ワクチン接種後40週齢近くまで生きたマウスもいた(※)。

 さらに、人間の50歳代くらいに相当する中年マウスにワクチンを接種したところ、70歳代くらいの高齢になっても、ワクチンを接種しなかったマウスに比べて活動量や歩行速度が維持され、フレイルへの進行が抑えられた(※)。フレイルは、身体機能、認知機能、病気やストレスに対する予備能が落ちて、要介護状態になる一歩手前の状態を指す。中年期に老化細胞除去ワクチンを打てば、老化に伴う身体機能の低下が抑えられる可能性があるというわけだ。超高齢マウスにワクチンを接種すると、驚いたことに、約2カ月後には毛並みがふさふさしてよく動くようになったという。

 先行して開発が進められている老化細胞除去薬の動物実験では、変形性膝関節症、アルツハイマー型認知症、心不全、慢性肺閉塞性肺疾患(COPD)、腎障害など加齢に伴って増える病気が、老化細胞を除去することで改善することが示されている。「GPNMBなどの老化抗原を標的とした老化細胞除去ワクチンが、これらの加齢性疾患の治療にも役立つ可能性は高い」と南野教授は言う。