老化細胞除去薬やラパローグなども有力候補

 今井教授に、NMNとNAMPT以外で有力だと見ている抗老化研究を聞いた。返ってきた答えは、①臓器や組織にたまっている老化細胞を除去する「セノリティクス(老化細胞除去薬)」、②免疫抑制剤のラパマイシンの誘導体である「ラパローグ」、③糖尿病薬としても用いられている「メトホルミン」の活用である。ラパローグは、哺乳類の老化の制御に関わるmTORと呼ばれる遺伝子の働きを抑えることで、老化を遅らせ、寿命を延ばすことが線虫やマウスで確認されている。

 このうち、特にビジネスと投資の観点から脚光を浴びているのが老化細胞除去薬だ。米国では、ユニティバイオテクノロジーなどのベンチャー企業が、関節炎や認知機能低下など、加齢によって増える病気の治療をターゲットに老化細胞除去薬の開発を進めている。

 ただし、「老化細胞除去薬、ラパローグ、メトホルミンは、どれもプロダクティブ・エイジングを実現する上で有力な候補ではあるが、医師の処方が必要な薬として開発が進んでいる。薬という形ではなく、抗老化研究の成果を社会実装していくという意味で、現時点で最も先行しているのはNMNだ。NMNカプセルは既に市販されており、誰でも試してみることができる」(今井教授)。

 とはいえ、今井教授は「現在市販されているNMNカプセルの品質は玉石混交」であると警鐘を鳴らす。一般社団法人プロダクティブ・エイジング研究機構で数社の製品を分析したところ、生体には存在しない不純物が検出された製品もあったという。

 「厚生労働省の『医薬品効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト』に記載されている『β-ニコチンアミドモノニクレオチド(NMN)』として、ヒトへの安全性が確認されているのは、研究用のNMNとして開発されたオリエンタル酵母と、ミライラボバイオサイエンス(旧新興和製薬)の製品だけ。また、NMNの点滴療法を実施しているクリニックもあるが、経口投与以外の安全性は確認されていない。生体に存在しない形のNMNや不純物の入ったNMN、あるいは誤った使い方で健康被害に遭わないようにしてほしい」と注意を促す。