期待されるNMNのヒトへの抗老化効果の証明

 NMNカプセルを試すとしたら、いつからどのくらい飲めばよいのだろうか。

 「マウスの研究で分かっている知見から考えると、20代~30代で健康な人が使ってもほとんど何も起こらない。一般的には、体内のNADが減少し、様々な老化現象を実感し始める50代くらいから使うとよいのではないか。1日の服用量は多ければいいというわけではなく、私たちがワシントン大学で実施した第1次の臨床試験では1日250㎎を10週間飲むことによって効果が得られている。1日100~300㎎程度が妥当ではないかと考えている。NADはサーカディアンリズム(概日リズム)という体内周期に合わせて変動し、ヒトの場合は最も活動量の多い日中に上がるので、NMNカプセルは朝か午前中に飲むのがポイントだ」と今井教授はアドバイスする。

 「ただ、NMNに関しては、老化細胞除去薬やラパローグなどと同じように、ヒトへの抗老化効果はまだ証明されていない」(今井教授)。体内のNADを高めるには、筋肉トレーニングや有酸素運動を続ける、あるいは非常に微量ではあるが、NMNが含まれるブロッコリー、枝豆、アボガド、トマトを毎日の食事に取り入れるという方法もある。

 ワシントン大学のサミュエル・クライン教授と今井教授の研究グループは、糖尿病予備軍で閉経後の女性25人を対象に共同で第1次臨床試験を実施している。その結果、NMN摂取群は、骨格筋(筋肉)において、血糖値を下げるホルモンのインスリン感受性が平均25%上がり、2型糖尿病やその予備軍で低下する糖の取り込み機能の改善がみられた。またNMN摂取群では、加齢に伴って下がる血液細胞中のNAD濃度が上がり、筋肉の再構築を促す遺伝子の発現が高まったことも確認されている。インスリン感受性の平均25%の低下は、10%体重を落としたとき、あるいは、糖尿病治療薬のトログリタゾンを12週間投与したときに生じる改善に匹敵するという。しかし、マウスへのNMN投与でみられたような体重減少、血糖値の低下、エネルギー産生を司るミトコンドリア機能の改善など、劇的な変化はみられなかった(※5)(関連記事:見えてきた、MNMのヒトへの抗老化効果)。

 「第1次臨床試験の結果だけでは、ヒトに対するNMNの抗老化効果が証明されたとは言えないが、現在、私たちを含め複数の研究チームは別の臨床試験を進めている。今後いくつかの臨床試験の結果が積み重なることで、NMNがヒトに対しても抗老化作用があると言えるときが来るのではないかと期待している」と今井教授。

 ワシントン大学では、2020年10月から、糖尿病予備軍で45~75歳の男女56人を対象に、NMN1日300㎎を16週間投与する効果を検証する第2次臨床試験をスタートさせた。この研究は国防省の予算で進められている。今井教授は、日本でも、プロダクティブ・エイジング研究機構などでNMNの抗老化効果をみる臨床試験を開始する予定だ。

ワシントン大学の今井ラボのメンバーと
ワシントン大学の今井ラボのメンバーと
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