米国では国を挙げて老化研究を後押し

 日米を頻繁に行き来する今井教授は、「日本の抗老化研究、抗老化ビジネスは、米国に比べると規模が小さく発展していくのはまだまだこれから」と指摘する。米国は、健康寿命を延ばすことを目的として、1974年に国立老化研究所(NIA)を設立、国を挙げて抗老化研究を後押ししている。

 「NADを増やすことが健康寿命を大幅に延ばすカギを握る」ということが世界中の老化研究者の共通認識になりつつあることから、今年12月にはNIAがNAD研究の専門家を集め、今後の社会実装の在り方を議論するシンポジウムを開催することも決まっている。抗老化ビジネスをキャッチアップするためには、この分野で世界をリードする米国の動きを注視する必要がありそうだ。

 「抗老化ビジネスに関心があるなら、当該分野の学会に参加したり、最新の抗老化研究の論文を読んだりすることはもちろん、実際に研究を行っている研究者に直接話を聞くことが大切。私は、日本が健康長寿のモデル国家として、今後他国が直面するであろう重大な問題に解決策を提示し、世界に大きく貢献できると信じている」と今井教授は強調する。その解決策となる候補の1つこそが、日本で開発が進められ、品質の面でも優位に立つNMNである。NMNを巡る研究・社会実装から目が離せないのは確かだろう。

※1 Cell Metab.2016;24(6):795-806
※2 Brain Res.2016 Jul 15;1643:1-9
※3 Cell Metab,2013 Sep 3;18(3):416-430.
※4 Cell Metab. 2019 Aug 6; 30(2): 329–342.e5.
※5 Science. 2021 Apr 22;eabe9985.

今井眞一郎(いまい しんいちろう)氏
ワシントン大学(米国ミズーリ州・セントルイス)医学部発生生物学部門・医学部門教授/神戸医療産業都市推進機構先端医療研究センター・老化機構研究部特任部長
今井眞一郎(いまい しんいちろう)氏 1964年、東京⽣まれ。1989年、慶應義塾⼤学医学部を卒業後、同⼤⼤学院で細胞の⽼化をテーマに研究。1997年に渡⽶し、マサチューセッツ⼯科⼤学のレオナルド・ガランテ教授のもとで、⽼化と寿命のメカニズムの研究を続ける。2000年にサーチュインという全く新しい酵素の働きが酵⺟の⽼化・寿命を制御していることを発⾒。2001年よりワシントン⼤学助教授、2008年より准教授(テニュア)、2013年より現職。2020年よりプロダクティブ・エイジング研究機構(IRPA)理事も兼任。専⾨は、哺乳類の⽼化・寿命の制御のメカニズムの解明および科学的基盤に基づいた抗⽼化⽅法論の確⽴。世界的に注⽬される抗⽼化研究の第⼀⼈者。著書に、『開かれたパンドラの箱 老化・寿命研究の最前線』(朝日新聞出版)など。

(タイトル部のImage:出所はGetty Images)