腸内細菌叢に悪玉物質が増えると老化細胞が蓄積

 老化細胞に着目した老化制御としてまず注目されるのが、老化細胞がたまることを防ぐための研究とその成果だ。

 老化細胞がたまらないようにするにはどうしたらよいのだろうか。原教授が第一に勧めるのは、肥満を防ぐことだ。原研究室では、マウスを用いた研究で、高脂肪食を食べ過ぎて肥満になると、腸内細菌が変化して悪玉物質が産出され、それが肝臓に運ばれることによって老化細胞がたまって過度のSASPが発生し、肝臓がんが発症するリスクが高まることを解明した。そして、さらに怖いのは、高脂肪食で飼育されたマウスの約3割は、肝臓がんだけではなく肺がんも併発していたことだ。

 また、肥満や脂質異常症などで、脂肪が肝臓に蓄積する脂肪肝から非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)になり、肝臓がんを発症した患者の腫瘍を調べたところ、約3割の患者の肝星細胞が細胞老化とSASPを起こしていた。一般的に、NASHから肝臓がんになる場合は肝硬変を経て発症するが、老化細胞が蓄積していた患者の中には、肝硬変を経ずにいきなりがんを発症していた患者もいたという(※2)。

 「私たちの体の中には、30兆から100兆個の腸内細菌が存在しており、その構成は食事の内容や栄養状態によって変化します。高脂肪食や過食が続くと、腸内細菌叢が変化して悪玉物質が増加し、肝臓がん以外にも大腸がんの発症の引き金になる可能性があるので要注意です(※3)」と原教授。さらに、高脂肪食によって腸内細菌叢に悪玉菌が増えると、がん以外にも、うつ病、認知症、糖尿病などにつながる恐れもある。

 ただ、定期的に適度な運動を続ければ、老化細胞の蓄積を抑えられる可能性もある。中年マウスを高脂肪食で飼育すると脂肪組織に老化細胞が蓄積してインスリンの分泌が低下し血糖値が上がりやすくなるが、有酸素運動をさせると老化細胞がたまりにくくなり、糖尿病リスクも改善するという(※4)。ウォーキング、ジョギング、水泳などの有酸素運動は生活習慣病を防ぎ健康維持に役立つばかりか、老化細胞の蓄積を防ぐことにもつながるわけだ。

 もう一つ、老化細胞の蓄積を防ぐために原教授が重視するのは、DNAを傷つけないようにする「体に優しい生活」だ。「喫煙、PM2.5(微小粒子状物質)、過度の紫外線、過度の飲酒は、修復不可能なDNAダメージを引き起こし、老化細胞を蓄積させ、発がんを誘発します。家族や同僚などの喫煙による受動喫煙も含めて、DNAダメージの要因になることはできるだけ避けましょう」と原教授は強調する。

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