早期発見しても「困り感」が減らなければ意味がない

 「かおTV」を早期に実施して親が子の特性に気づき、必要に応じて療育につなげることは、ASD児の「生きづらさ」改善の大切な糸口となる。なぜなら、ASDの特性は通常3歳未満にあらわれ、それにともなう社会機能障害は青年期、成人期まで及ぶことが多いこと、さらに、ASDは療育を早期にスタートするほど予後の改善が期待できることがわかってきているからだ(下のグラフ)。

早期介入によってASDの予後は改善し、本人の「生きづらさ」が減る
早期介入によってASDの予後は改善し、本人の「生きづらさ」が減る
生後18ヵ月から30ヵ月までに早期介入療育プログラム(ESDM)を開始した39名のASD児を追跡調査。6歳時点での知的能力、適応行動、症状の重症度、困難な行動の改善度を調べた。ESDM実施群は通常のコミュニティ介入群(COM)よりも自閉症の症状(社会的関係、コミュニケーション、遊びや反復行動における症状)の改善効果が維持されていた。グラフは、他者とのコミュニケーションや行動特徴などを見るスコアで、改善するとスコアが下がる(図:J Am Acad Child Adolesc Psychiatry. 2015 Jul;54(7):580-7.を基に作成)
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 「早期介入によるエビデンスは世界でも数多く集まっています。ASDの子には特別な関わりが必要で、周囲の理解や環境次第で予後は良くも悪くもなります。困難である部分を理解して取り除き、伸ばすべきところは伸ばすというまなざしを、家族や周囲が持つことが重要です」(片山教授)。

 とはいえ、問題は、わが国において社会の受け皿が不十分だということだ。人への関心が見られないASDの子に対して、その子の状況に即したタイミングで「人との関わりが楽しい」と感じられるようなさまざまな働きかけをする療育プログラムはあるものの、全国に広く浸透しているとはいえない状況だ。「わが子にASD傾向があるとわかっても、社会の受け皿が示されなければ、本人や家族の困り感はなくなりません」(片山教授)。

 また、就学前まではその子の特性が受け容れられて育っていても、「小中学生になり、理解のない集団で長く過ごす環境に変わると困難度が高まり、いじめを受けたり、遠ざけられたりして不登校になるというケースもあります」(片山教授)。

発達障がいの子は中学生になると減るが、不登校への移行がその一因かも
発達障がいの子は中学生になると減るが、不登校への移行がその一因かも
通常学級に在籍する「発達障がいの可能性あり」とされる生徒数(グラフ上)は、中学校以降減少するが、その一方で、「不登校児童生徒数(グラフ下)」は中学校以上に激増する。発達障がいで生きづらさを感じる児童が通常学級に通い続けず、不登校に移行している可能性が読み取れる。上:知的発達に遅れはないものの、学習面、各行動面で著しい困難を示すとされた児童生徒の学年別集計。(出所:通常の学級に在籍する発達障がいの可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について,文部科学省、2012)。下:学年別不登校児童生徒数(出所:児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について 文部科学省2019年)
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