4~5年内の実用化を目指す、世界も視野

 今年中に実施する臨床試験では、成人のうつ病患者に実際にVRゴーグルを装着してもらい、体験学習してもらうことで、症状の改善やユーザビリティを検証する。人数は12人、治療期間は2カ月の予定だ。コンテンツは対面のCBTのプログラムに基本的には準じ、すぐに心地よさをうけとる短期的な報酬体験から、少し努力をしてその分大きな喜びをうけとる長期的な報酬体験まで、段階を追って、報酬系のサイクルを活性化させる。

 「1回目の試験なので、まずはうつ病患者さんがVRを苦痛なく使えるかを主な検証項目にします。中にはスイッチを入れたり、ゴーグルをかけたりすることすら負担になる人もいます。また、健康な人でも起こりえますが、VR酔いといって映像で気持ちが悪くなるケースも想定されます。不快なことが起これば、二度と使いたくなくなってしまいますし、それがきっかけで通院もできなくなってしまう恐れもあるので、使用上のネガティブ要因を臨床試験でしっかり洗い出しておく必要があります」(蟹江医師)。

 どんなコンテンツが患者の興味をひき、VR利用のモチベーションを上げるかも今回の試験で探る、と上路社長。「emouの実績から、うつ病に対しても、VRコンテンツの冒頭で見せる“チュートリアル(使い方説明)”の段階で、いかに心をつかむかが継続には重要と考える」(上路社長)。患者さんの反応はAIを用いてログ解析し、コンテンツ構築に生かす計画だ。

 臨床試験と並行してコンテンツの開発も進めていく。4~5年内の実用化を目指し、海外向けに英語版のリリースも視野に入れているという。のびしろが大きく期待の高いデジタル治療。遠くない将来、ハイレベルな群雄割拠の時代が訪れるかもしれない。

プロジェクトのメンバー(出所:ジョリーグッド)
プロジェクトのメンバー(出所:ジョリーグッド)
伊藤正哉氏(画面中央のPC内):国立精神神経医療研究センター 研修普及室長
心理学博士、臨床心理士、公認心理士。筑波大学大学院人間総合科学研究科 ヒューマン・ケア科学専攻 発達臨床心理学分野博士課程修了後、日本学術振興会特別研究員、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所成人精神保健研究部流動研究員、ヨーク大学およびコロンビア大学客員研究員等を経て現職。特に、うつや不安、トラウマ、死別にともなう感情に対するよりより医療やケアの臨床・研究に力を入れている

蟹江絢子氏(下列左から2人目):国立精神神経医療研究センター 精神科医師
医学博士。日本精神神経学会専門医、日本総合病院精神医学会専門医。筑波大学医学専門学群医学類(医学部)卒業後、国立国際医療研究センター初期研修医等を経て現職。東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科認知行動医学系博士課程修了。厚生労働省認知行動療法研修事業スーパーバイザー兼任。産業医でもあり、多くの職種との協働による治療アプローチを心掛けている

上路健介氏(上列左から3人目):ジョリーグッド 代表取締役CEO
テレビ局、広告会社、北米にて先端テクノロジー新事業開発20年を経て、2014年、株式会社ジョリーグッド創業。2015年、高精度VRラボ「GuruVR」を立ち上げ、テレビ業界トップシェア。2018年、VR×AI人材育成ソリューションを発表し、2019年には医療教育VR、発達障害向けVR、介護教育VRを展開し、VRによる人の成長や社会復帰の支援に注力している
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(タイトル部のImage:出所はジョリーグッド)