学術的な裏付けが支える気持ちよく満ち足りたひととき
途中、森のなかで地面に寝転がったり、ハンモックに横たわったり。空高くのびる木々の梢を眺めるだけでも実に心地よいが、風に揺れて明滅する木漏れ日は目を通して脳神経に好影響を与えるとの学術的な理由が説明されると、より前向きな意識が高まる。川に入り手足を冷やすのは、クナイプ療法と呼ばれる自然治癒力を引き出すメソッドに沿ったもの。血液の循環を活性化させる働きがあるといわれるが、実際、足のむくみが取れた感じで、すっきりとなる。
昼ご飯はモリアオガエルが生息するという水辺で、特製の弁当をいただく。カロリーや塩分は控えめながら、青森県の特産品であるホタテや、昔から地元で食べられてきた若生昆布(やわらかい昆布の新芽)のおにぎりなど伝統食が盛り込まれ、味わいとともに蘊蓄も満ち足りた内容だ。
コース名にもなった青森ヒバの神木、樹齢約800年ともいわれる「十二本ヤス」は、幹が十二本にも分かれて天を目指す巨木。その姿を眺めながら、伊藤氏は話す。
「ヘルスツーリズムの3要素は、運動、栄養、休養。疲れるほどやみくもに歩くことが目的ではない。ですから、楽しかったという声が、一番嬉しいですね。心が癒やされたという結果ですから」