人生100年時代だからこその、がんとの向き合い方

 個人(患者)がどのような気持ちやスタンスで、がんという病に向き合っていくべきなのか。そんな意識の変化を含めた行動変容についても興味深い意見が幾つか飛び出した。

 「仕事が成功すれば幸せになれる」「病気にならなかったら幸せになる」と考えがちだが、実は因果関係はすべて逆──。科学的なアプローチで“幸せの可視化”を研究し続けてきた日立製作所 フェロー ハピネスプラネット代表取締役CEOの矢野和男氏はそう語る。実際、幸せの感度が高い人たちと、そうでない人たちを比べると平均寿命が10年も違うという論文が最近発表されているという。「この論文結果を医療政策に反映していけば、何かが変わるかもしれない。ポジティブな気持ちでいることが、がんを含めた病気にかかる確率を低くするのではないか」(同氏)と期待を込める(関連記事:「幸せ」「前向き」こそが、ある種の万能薬だ)。

 がんという病がネガティブに捉えられがちなのは、これまで社会が作り出してきたストーリーに基づく部分が大きい。しかし、柔軟性のある思考や着眼点を持つトレーニングを重ねることで、ポジティブなストーリー作りのスキルを身に着けられると矢野氏は語る。「これまではそのスキルを企業の従業員に活用してきたが、今後はがんを含めた医療分野にも適用できるのではないか。そのアプローチを知っていれば行動変容を起こしやすいだろう」(同氏)。

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 アフラック生命保険 取締役上席常務執行役員の宇都出公也氏は、人生100年時代になってきたからこその、がんとの向き合い方を指摘する。座長挨拶で日本学士院長、京都大学名誉教授・元総長の井村裕夫氏が触れたように、長寿になればなるほどがんは増えていく(関連記事:生命進化の歴史から「がん」を考える、今後できることとは)。こうした中で、「“一生がんにならない”のは現実的に難しい」と宇都出氏は話す。

 そこで宇都出氏が触れたのが「天寿がん」という考え方だ。「以前、がん研究所名誉所長の北川知行先生が『天寿がん』を提唱された。がんを患った80代後半から90代の方々が手術をせずに大往生する“『痛み』や『苦しみ』を感じさせずに安らかに人を死に導く超高齢者のがん”を現したものだ。人生100年時代においては、がんを撲滅する努力と同時に、がんになっても『天寿がん』として死ぬことを含めた考え方が重要な時代になっていると思う」(同氏)。