Beyond Healthが実施した円卓会議「健康で幸福な人生100年時代の実現へ「がんと行動変容」を考える」。「がんにならない」あるいは「がん罹患後に社会と共生する」ための行動変容をテーマに、一人ひとりの「個人」としての行動変容に閉じた話ではなく、企業や社会としての行動変容などを含む多様な視点からの議論が展開された。会議の終了後、座長を務めた日本学士院長、京都大学名誉教授・元総長の井村裕夫氏に、あらためて感想を聞いた。

日本学士院長の井村氏(写真:行友 重治、以下同)
日本学士院長の井村氏(写真:行友 重治、以下同)
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 会議冒頭の座長挨拶で触れた通り、人間にはがんが多く、長生きをすればするほどがんにかかりやすくなります(関連記事:生命進化の歴史から「がん」を考える、今後できることとは)。それを絶対的に防ぐ方法は残念ながらありません。しかし、がんになりやすい要因・状況は幾つか明らかになっており、その中には予防できるものも多く含まれています。

 例えば、がんの発症に関わる要因として知られる、喫煙や食事、飲酒、紫外線・放射線曝露などへの対策は一般的な予防として進める必要があるでしょう。それらのリスクに関する情報を一般の人に十分に伝え、少しでもがんになる機会、可能性を低くする。その際、できる限り個人の特徴に合わせた個別の予防を進めることが、効果を上げる意味で肝心です。

 それから、会議の中では「幸福」に関する議論もありました(関連記事:「幸せ」「前向き」こそが、ある種の万能薬だ)。その人が幸福に感じるかどうかは主観的なものなので、こうすれば幸福になれるというものを示すのは非常に難しいです。

 ただ、幸せでいることが健康や寿命にも関わってくるのも事実です。英国ではコホート調査(同一集団統計調査)が盛んですが、1946年に生まれた赤ちゃん数千人の追跡調査を実施した研究では、家庭環境が不幸だとがんの罹患率が若干高いという結果が得られています。ですので、がんの予防では、こうした家庭環境などもある程度考えておくべきでしょう。

 がんになった人をどう支えるかについても知恵を絞る必要があります。どんな人がいつがんになるかはまだまだよくわかりません。がんに罹患しても、がんになる前と同様に自分らしく生きていける社会がもちろん望ましいと言えます。

 最後に、今回の会議のテーマである「がんと行動変容」に関し、医療者だけではやれることに限界があります。あらゆるプレーヤーが関わって社会全体で考えてほしいというのが私の願いです。(談)

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(タイトル部のImage:川崎 樹音、剣持 悠大)