がん患者を特別と考えない、社会全体の意識改革が必要

 そのために、患者の動揺を和らげ、少しものごとの捉え方を変えてもらうことも私たちの役目です。例えば、ウィッグ姿に不安を感じている患者には、ウィッグ市場の売り上げは、医療用よりおしゃれウィッグの方が圧倒的に多く、中高年の方に一般に利用されていること、外から見たら両者は同じ姿であることを伝えると安心します。

 また、患者が外見を気にするときは、必ず、不安に思う具体的なシーンがあります。そこで「髪型を変えたの?」と言われたときにどのように対応するかを、事前にシミュレーションするだけでも気持ちを前向きにすることができます。そうした認知の変容やコミュニケーショの円滑化が、QOL改善につながるのです。

 外見をどのように見せるかは、人間が社会的動物として生きていくための一手段に過ぎません。症状を隠しても隠さなくてもよく、また、より強調することで楽に生活できるときは、患部を強調してすらかまわないと思います。

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 社会的にも、少しずつ理解が広がっています。2017年に策定された第3期の「がん対策推進基本計画」から、「がん治療に伴う外見(アピアランス)の変化」が明記されるなど、社会全体で外見変化に悩む患者を支援する方向にシフトしました。2018年には免許証の写真も帽子やウィッグのまま掲載することが認められ、患者が生きやすい社会になりつつあります。そのほか自治体の助成が非常に伸びており、全国の200を超える市区町村でウィッグや乳房補正具などの購入補助を実施しています。

 これからは、がん患者を特別と考えない、職場も含めた社会全体の意識改革が必要とされています。病前と変わらず、がん患者が安心して暮らせる社会を作っていきたいと考えています。(談)

(タイトル部のImage:川崎 樹音、剣持 悠大)