高齢化などに伴い、がん患者の増加が見込まれる中、いかに効率的で高水準かつ良質なケアを提供する仕組みを作っていけるか。ここを打開しないと、医療リソース不足そのものがボトルネックになってしまうと、今回の円卓会議の参加者の一人である医療法人社団鉄祐会 理事長の武藤真祐氏は指摘する。テクノロジーの活用で、医療従事者にも患者にもメリットのある、新たな仕組みの構築が求められている。(小谷 卓也=Beyond Health)


 医師になりたての頃、白血病の女性患者の主治医となりました。彼女はまだ19歳でしたが、当時は白血病は不治の病とされていました。

医療法人社団鉄祐会の武藤氏(写真:川崎 樹音、剣持 悠大、以下同)
医療法人社団鉄祐会の武藤氏(写真:川崎 樹音、剣持 悠大、以下同)
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 残念ながらその2年後に亡くなりましたが、5カ月に渡って担当しました。ですから、亡くなったときには私自身がどうすればいいのかわからずに混乱してしまいました。その後、がんという病気はもう絶対に見たくないとの思いから、医師が頑張ればそんなに人が死ぬことはない循環器内科を選んだ経緯があります。

 ところが循環器内科医を続ける中で、亡くなることを目前にした人を救いたいとの気持ちがふつふつと芽生えてきました。その結果、2010年から在宅医療クリニックを始めました。現在、都内7カ所、被災地支援で宮城県石巻市に1カ所、合計8カ所で開業しています。

 在宅医療の現場では、がんの末期患者に接する機会が数多くあります。非がんの領域と比較して、がんには明らかな特徴があることがわかりました。

 第1は、がんは急に診断がつく病気ということ。非がんの病気、例えば脳卒中や心筋梗塞などは、生活習慣や高いコレステロール値などの因果関係を本人も把握している場合が多い。しかしがんは、突然告知されて衝撃を受けるケースがほとんどです。患者にしてみれば、かかった理由が思い当たらず、どこに不満や怒りをぶつけたらいいのかもわからない。そのため、ただただやるせない気持ちが募ります。

 第2は、「5年生存率が何%」と寿命の確率が付きまとう人生になること。ほかの病気で、がんほどあからさまに生存率が示されることはありません。ある意味、将来を予測された人生になる。そこが非がんの病気とはだいぶ違います。

 第3は、必ずと言っていいほど何らかの症状が出てくること。その症状との戦いが深刻な問題に発展します。よって、がん患者に対しては、これらの違いを理解した上で治療を進める必要があることを在宅医療の活動で学んできました。

 日本の在宅緩和ケアは非常に優れていますが、とても人手のかかる作業です。高齢者の増加に伴い、がん患者がどんどん増えることが予想される中、言葉を選ばず言えばより効率的で高水準かつ良質なケアを提供する仕組みを作っていかねばなりません。ここを打開しないと、医療リソースの不足そのものがボトルネックになってしまいます。