世界の研究では「妊婦と子どもには魚油」という潮流

 妊娠期のうつ対策には従来の治療法とは異なるアプローチが求められる。

 そこで、西氏が着目したのが栄養だ。具体的には、青魚に豊富に含まれる、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)などの不飽和脂肪酸。n-3系脂肪酸とも呼ばれるこれらの油は、自分の体では合成できない必須脂肪酸で、脳や神経、心血管系などを中心に全身の臓器、細胞の機能維持に欠かせない重要な栄養素。しかし近年、我が国ではその主要補給源である魚の摂取頻度が減っていることから、摂取量が減少している脂肪酸でもある。

 西氏がn-3系脂肪酸に着目したのは、海外を中心に信頼度の高い研究報告があるからだ。例えば、母乳中のDHAが多く、魚の摂取量が多い国ほど産後のうつ病有病率が低いことが報告されたのは2002年(図1)。2007年には、妊娠期のn-3系脂肪酸摂取量が多いほど、8歳時点の子どもの言語知能指数(IQ)が高くなるとの報告も5)

図1●魚の摂取量が多いほど産後うつになりにくい
図1●魚の摂取量が多いほど産後うつになりにくい
「エジンバラ産後うつ病スケール」を用いた産後うつ病の有病率データ(被験者1万4532名)と、母乳中のDHA、EPA、およびアラキドン酸含有量、23カ国の調査による魚介類消費量を比較した。その結果、母乳中のDHA含有量の低下と魚介類の摂取量の低下のいずれも、産後うつ病の発生率の上昇に関連していた(出所:J Affect Disord. 2002 May;69(1-3):15-29.のデータを基にBeyond Healthが作成)
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