●注目キーワードは「健康まちづくり」

超高齢社会のまま、少子化とあいまって人口バランスが大きく崩れる2040年問題に向かう日本。誰もができる限り健康で幸せを実感できるまちをどうつくるのか。2022年は全国各地で「ヘルス/ウェルネス」の観点を軸とした健康まちづくりの挑戦が活発化することが予想される。

医療や介護、健康に不安を感じないまちづくりのトレンドはデジタル技術の活用だ。ただ、地域ごと抱える課題は様々で、どんなデジタル技術をどう取り入れるかは、自治体の腕の見せどころ。さらに言えば、担当者の熱意や信念が成否を大きく左右する。

今回は一例として、まちを挙げて介護DXに挑む茨城県大子町(だいこまち)の取り組みを紹介したい。過疎化に苦しみながらも希望ある未来へのまちづくりが現在進行で続いている。


 茨城県の最北西端に位置する大子町は、人口約1万6000人の小さな町。全住民のうち、4人に1人が75歳以上の高齢者で、65歳以上の高齢化率は46%にもなる。

 そんな大子町で目下進むのが、ICTを活用して介護現場を働きやすい環境に整えるプロジェクトだ。現在、6社のベンチャー企業と連携し、システムを導入している段階にある。

 実は、今をさかのぼること2年前、2021年度から始まる第8期大子町介護保険事業計画の策定の際に町内の介護事業所に対して行ったアンケート結果が、町が動き出すきっかけになった。2025年には高齢化率50%と予測される中、自由記述欄には「現場は人材不足に悩んでいて、限界に近い」「世間の介護事業所に対するイメージが悪すぎる」といった悲痛な叫びが相次ぎ、「町で何とかしてほしい」と行政に頼る声が少なくなかった。大子町福祉課長の鈴木大介氏は「事態の深刻さを思い知らされた」と振り返る。

 そこで、福祉課は従来は町の高齢者福祉や介護保険関連業務に追われる日々だったが、それだけでは町内の介護事業所はいずれ立ち行かなくなるとして、「町としても介護事業所に寄り添って課題を解決していく必要がある」(鈴木氏)と発想を切り替えた。

 そんな矢先、2020年10月に経済産業省関東経済産業局の主催で、民間企業との連携に意欲を見せる自治体がヘルスケア関連のベンチャー向けに課題やニーズを発表する「ガバメントピッチ」が開かれた。ピッチを聞いたベンチャーが後日、課題の解決策を提案し、自治体が面談先を選定して最適なプランを採用するというもので、大子町はこのピッチに参加(関連記事)。そこでヘルステック企業17社から提案があり、すべて面談の上、最終的に6社を選んだのだった。

 各社が提供するソリューションは、介護施設向け高齢者見守りシステムや遠隔医療相談サービス、通所介護計画書作成支援システム、動画とICTを活用した職員間での情報共通ツールなど、バラエティーに富む。

 6社の選定は2020年12月に終了し、あとは各介護事業所にソリューションを実装してもらって検証を進め、実際の導入にまでこぎつけるという工程を踏むことになるわけだが、大子町では決して先を急ぐことはなかった。

茨城県大子町福祉課長の鈴木大介氏(写真:柳下知彦、以下同)
茨城県大子町福祉課長の鈴木大介氏(写真:柳下知彦、以下同)
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