今年3月、人工知能(AI)を搭載し、専門医に匹敵する高い精度で大腸内視鏡画像の診断支援を行うソフトウエア「EndoBRAIN(エンドブレイン)」の国内販売をオリンパスが開始した。AIを用いた内視鏡関連ソフトウエアとして、医療機器の承認を得たのは国内初となる。

この開発を進めた研究グループの代表者が昭和大学の工藤進英氏だ。工藤氏は大腸内視鏡検査を通算35万例以上手がけた大腸がん診療の名医で、悪性度の高い陥凹(かんおう)型の大腸早期がんを世界に初めて報告したことでも知られる。多くの後輩医師を育て、早期がんの発見に尽力してきた同氏に、AIを使った病理診断に至るまでの道のりを伺った。

(聞き手は瀬川 博子=医療ジャーナリスト)

大腸内視鏡診断を支援するEndoBRAINは、製造販売承認を受けた内視鏡関連のAI搭載製品としては、国内初のソフトウエアになると聞きました。超拡大内視鏡を使って、検査時に見つけたポリープが腫瘍であるかどうか、わずか0.4秒でその場で解析できるそうですが、最大520倍で細胞レベルまで拡大観察できる超拡大内視鏡の開発を進められたのも先生です。こうした斬新なアイデアはどのようにして生まれてきたのでしょうか。

大腸内視鏡検査中に、超拡大内視鏡の画像をAIが解析し、わずか0.4秒で病変の悪性度を見極める。右は99%の確率で腺腫と判定。左は99%の確率で粘膜下層に浸潤したがんと判定した。超拡大をすることで細胞内の核の状態まで確認し、細胞異形度を画像で分析するため、病理と同等の判定ができる(写真:的野 弘路、以下同)

 先日、米国で開催された内視鏡の学会に参加したのですが、そこで受けたインタビューでも「陥凹型大腸がんの発見から始まって、どうして世界最先端のことを次々とやれたのか? あなたのマイルストーンを話してほしい」と熱心に聞かれました。また、今年の8月末にはインドのハイデラバードで開かれる消化器内視鏡の会合に招待されていますが、そこでは「Legend speaks: Innovation of magnification Endoscopy: My journey」(レジェンドが話す:拡大内視鏡のイノベーション:私の旅)をテーマに講演を頼まれています。米国の内視鏡学会と同様、どうやって私が大腸内視鏡の歴史を積み重ねてきたのか、これまでのロードマップを話してほしいというのです。

 うちの消化器センターの若い医師達に言わせれば、私は「先を読む天才」なのだそうです。でも、「次々と最先端のことを」と言われても、陥凹型早期がんの発見からAIを使った画像診断支援システムの開発に至るまでには30年以上かかっています。