診察データや処方箋の情報を皆で活用可能に

PaaSの部分には、どのようなことが求められるのでしょう?

 ここの情報を整理することが、システムの肝とも言えるでしょう。健康領域のPaaSにはどんな部品が求められるのかを、我々は徹底的に考えました。HIE(ヘルスケア・インフォーメション・エクスチェンジ)の部分です。いろいろなSaaSで必要される健康情報を、PaaSに整理して定義して、そして収納してあげる必要があります。

 例えば、いろいろな医療サービスが管理している情報があります。今までカルテなどの診断情報は個々の医療サービスが持っていて情報共有されていなかった。どのような情報が必要になるかを整理して皆が活用できるようにすれば、もっといい診断ができるかもしれない。薬の処方箋の情報も同様です。これまで処方されてきた薬がトータルで分かれば、個々のお客様にとっても次の診断の際の参考になるし、また製薬メーカーからすれば、貴重な臨床データとして使用できます。

 HCDLが目指しているのは、繰り返しになりますが、健康に関するサービスを提供する際の、プラットフォームになることです。SaaSであるパートナーが我々のプラットフォームを使ってサービスを提供するというモデルです。パートナー側からすれば、何かのサービスを開発したらすぐにほかのパートナーと組むことも可能になります。そのようなエコシステムを構築したいと考えています。そうすれば地域の健康情報プラットフォームになれる。

(撮影:劉偉、以下同)

HCDLのプラットフォームが活用される、具体的なイメージを教えていただけますか?

 我々は政府のニーズがどこにあるのかというのを分析しました。そして、それらのニーズに、いくつかの分野で貢献できると考えています。

 その一つが「分級診療システム」です。中国では、病院にランクが定められており、低い方から1級、2級、3級の3ランクがあります。政府としては、例えば軽い風邪などはまず1級病院から診療してもらって、そこで解決しなければ2級、3級と段階を踏んでもらいたい。この分級診療システムを定着させたいのですがあまりうまくいかず、皆が3級病院に行って混雑しているというのが現状です。

 もし我々のシステムを利用してもらえれば、地域の病院同士で患者のデータが共有できます。例えば、最初は3級病院で診断してもらい、薬に何を出したかなどの情報を共有する。2回目、3回目からはその情報が1級病院でも確認できるので、それを元に処方ができれば患者も安心ができる。高血圧とか糖尿病などの慢性病に関しても、1級病院で安心して治療ができるようになります。

 このときに、処方箋データを安全に共有できるシステムが必要になってきます。3級病院で出してもらった処方箋は、ちゃんと他の薬局にも安全に流していかなくてはいけません。我々のプラットフォームではブロックチェーンの仕組みを利用して、安全性を担保しながら情報を流通させられます。3級病院で出した処方箋データを、1級病院でも安心して活用ができます。

 政府が進めている「家庭医者システム」の後押しも可能です。家庭医者システムというのは、個々の市民に対して担当の医者を決めているシステムです。病気になった場合は、基本的にはその担当の医者を訪ねてもらうようにする。ほとんどの場合は1級病院の医者です。ただこのシステムも、4年ぐらい前から制度化されているのですが、まだ活用されていない。やはり患者は大きな病院に行きたがるし、たとえ1級病院を訪ねたとしても、その患者の情報が全くないので一から質問をして診察をしなくてはならずに手間がかかる。

 我々のプラットフォームがあれば患者の情報が分かるので、何かあって診療に訪れた場合でも、これまでの病院に行った履歴がすぐにわかります。スムーズに診療できるようになるのです。