「40Hzのγ波」でマウスのアミロイドβが半減

坪田さんは、脳波と認知症の研究にとても注目していると伺っています。まずはリーフエ・ツァイ氏の研究成果について解説をお願いします。

 ツァイ氏らが、マウスを用いた研究を行い、「40Hz(ヘルツ)のγ波の光を当てると脳内でアルツハイマー病の原因となるアミロイドβが除去される」※1と、最初に『Nature』に発表したのは、2016年12月のことでした。さらに、彼女らは研究を重ね、今年(2019年)4月、米科学誌『Cell』に、「音と光によるγ波刺激でアルツハイマー病が改善する」※2との研究成果を公表したのです。これまでの医学の世界では、脳波というのは、あくまで検査の結果と照らし合わせる指標の一つでした。例えば、アルツハイマー病になると、γ波が低下することが知られていましたが、それは病気になった結果表れてくる変化でしかありませんでした。

 ツァイ氏らの研究の面白さは、脳波の波長そのものに機能性があることを見出したところです。これが、彼女たちが起こしたパラダイムシフトです。まだ動物試験の段階ではありますが、20Hz、40Hz、80Hzなどいろいろ試した結果、マウスの脳の中に40Hzのγ波を発生させると、脳内に蓄積されたアミロイドβが半減するという結果を得たのです。

γ波とはどのような脳波なのですか。

 僧侶が瞑想したり、指揮者がオーケストラを指揮したりと、人が非常に集中したときに出る脳波がγ波です。普通、周波数31~120Hzの脳波をγ波と呼びますが、アルツハイマーを改善する作用があるのではないかと注目されている波長は限定されていて、40Hzです。

 以前から、集中力を高めるとγ波が出て脳が守られるのではないかとは考えられてはいましたが、それはあくまでイメージに過ぎませんでした。それを科学的に証明したのが彼女たちの研究だったのです。

 さらに強制的にγ波を発生させることで、脳内の“お掃除細胞”であるミクログリアが活性化して、脳内のアミロイドβが除去される──というメカニズムもわかりました。40Hzのγ波が本当にアミロイドβの蓄積を抑えることが科学的に確認できたのです。

 『Nature』で彼女たちの論文※1を見たとき、僕は本当に驚き、興奮しました。