アルツハイマーの治療や予防に応用される可能性大

脳で血管新生機能が高まることは、アルツハイマー病の改善につながるのですか。

 それはまだ分かりませんが、加齢によって脳の血流が悪くなることが海馬の萎縮につながるというエビデンスはあります。新しい血管が増えて血流がよくなれば、脳を守ることにつながるかもしれません。ツァイ氏の研究成果から言えることは、視覚と聴覚という感覚刺激が脳を守るために非常に重要だということです。眼と耳からの刺激が脳のエイジングを遅くする。

 逆に、家の中にじっとしていて誰とも話さない刺激のない生活は、アルツハイマー病のリスクを高め、脳の老化を加速させてしまう恐れがあります。もしかしたら、瞑想してγ波が高まれば、アルツハイマーの予防につながる可能性もあるかもしれませんね(笑)。米国では、脳波計で脳波を測りながら瞑想するためのツールが登場し、流行っています。僕も試していますよ。γ波を高める瞑想法のポイントが解明されたら興味深いと思います。

γ波照射によるアルツハイマー病治療や予防について、人への応用研究は始まっているのですか。

 はい。ツァイ氏らは、まずは少人数の被験者を対象に安全性をみる臨床試験を始めています。眼や耳からγ波刺激を与える方法は、手術などと違って侵襲がないので、効果が証明されればアルツハイマーの治療法や予防法として応用しやすいと考えられます。

 本当に40Hzが人にも効果があるのかは、今後の本格的な臨床試験の結果を待つ必要がありますが、非侵襲的な方法でアルツハイマー病が治療できるとすれば、画期的なのは間違いありません。日本でも、眼や耳からのγ波刺激によるアルツハイマー治療の実用化に向けた臨床研究が始まることを期待しています。


[参考文献]

※1Nature. 2016 Dec 7;540(7632):230-235.

※2Cell. 2019 Apr 4;177(2):256-271.e22.

(タイトル部のImage:剣持 悠大)