ヘルスケアスタートアップへの注目がますます高まっている。一部のスタートアップにはベンチャーキャピタル(VC)などからの資金が潤沢に集まり始め、協業や出資を模索する事業会社(大企業)も増えだしている。ただし、起業前の「シード」やプロダクト自体がまだできていない「プレシード」の段階にあるスタートアップを支援するエコシステムはまだまだ構築されていないのが実態だ。

こうした中、シードやプレシードに特化したVCであるライフタイムベンチャーズは2019年8月、最大10億円規模の2号ファンド設立を発表した。今回のファンド設立の背景や、どのようなスタートアップに投資するのか。一方で、スタートアップとの協業や出資などを模索する事業会社への要望は――。代表パートナーの木村氏に聞いた。

(聞き手は小谷 卓也=Beyond Health)

裏テーマは「日本に残された数少ない成長産業」

このほど、最大10億円規模となる2号ファンドの設立を発表しました。

 このファンドは、起業前の「シード」やプロダクト自体がまだできていない「プレシード」の段階にあるスタートアップが対象です。そういったスタートアップと一緒に事業と会社を作っていくところから、コミットできればと考えています。

 2019年7月末時点の出資者は、インキュベイトファンド、アフラック・イノベーション・パートナーズ、そして個人投資家です。それ以外の事業会社や個人投資家からの出資も予定しており、2020年3月まで募集を続けています。

 投資する分野のテーマとして想定しているのは3つ。第1は「Digital Health」で、デジタルテクノロジーを活用した医療・介護・健康関連サービス全般。第2は「Industry Cloud」で、特定業界のデジタルトランスフォーメーションに特化したSaaS/PaaS等のクラウドサービス全般。第3は「X-border Japan」で、日本を基軸としたインバウンド又はアウトバウンド関連サービス全般です。

 これら3つには、「日本に残された数少ない成長産業」という共通の裏テーマがあります。そういったところから投資を始め、事業を立ち上げていくことで、我々の投資理念である「長く愛され、存在し続ける事業の創出」を実現していきます。

今回、このタイミングで2号ファンドを設立した背景は。

 現在の日本は、起業の領域が5年前や10年前と比較して大きくシフトしています。加えて、ベンチャーキャピタル(以下、VC)業界も新規設立や既存ファンドの大型化などで活況を呈しています。その理由は、社会も産業界も「この国の人口問題や社会構造の問題を解決しないと、本当に大変なことになる」と思い始めているからでしょう。

 このような背景から、起業の領域はいわゆる「デジタルトランスフォーメーション」にシフト。そして、これまでITやテクノロジーの恩恵をあまり受けてこなかった業界への期待感が高まり、既存産業×テクノロジーなどの領域に対するベンチャー投資が盛り上がっているという現状があります。

 しかし、大きな課題があります。それは、シード段階のスタートアップを支援するVC(以下、シードVC)が決して多くはないということです。実際、この数年でVC業界全体の資金規模は約10倍に増加している一方で、シードVCの数は1.5~2倍程度にしか増えていません。

 このような状況にあって「私自身が役に立てることはないか」と思ったことと、やっている人が少ないのであれば「ニーズがあるのではないか」と感じ、まず2年半前に1億円の規模で1号ファンドを実施しました。そして今回、最大10倍の規模にパワーアップした2号ファンドを、協賛してくれたファンド出資者のおかげで、いまスタートを切ることができたところです。