2号ファンドから3社のヘルスケアスタートアップに投資済み

今回の2号ファンドで投資するスタートアップは既に決まっていますか。

 既に8社に投資しており、今後さらに8社前後に投資をする予定です。プレシードやシードのスタートアップはIPOやM&Aといった、いわゆる「Exit」までの時間軸が長い。ファンドとして意味あるリターンを出していく意味でも、出資先の成長支援にかけられる時間を少しでも長くする意味でも、初回出資はスピード重視で今後1年から1年半で新規出資は完了させ、それ以降は経営支援や追加出資に注力したいと考えています。

 一般的なVCと比較すると、一つのファンドの投資先が16社前後というのは少ない方でしょう。特に、プレシードやシードのスタートアップが対象となれば、投資段階でのリスクの見極めが難しいので、シードVCの一般論としてはより多くの会社に投資する投資モデルを取るケースが多いです。そのなかでうまくいった会社への追加出資を繰り返すことで勝ち馬に乗るのが常套手段です。

 しかし、弊社はそういった手段をあえて取らず、社数を絞った厳選投資でやっていくつもりです。これは、私自身が支援を直接、密にできる社数に絞っているからという理由もあります。原則として出資先とは週1回の定例ミーティングを持ち、ファイナンスに動く際には他社VCとの話し合いにも同席するなど、数少ない出資先にしっかりコミットする方針で進めています。

投資先のうち、ヘルスケア系のスタートアップは?

 2号ファンドから既に投資済みの8社中、3社がヘルスケア関連です。今後、あと3~4社は増えると思います。

 その中で注目している1社が、慶応義塾大学医学部発の「METRICA」です。代表の西村宇貴氏は現在25歳。同大学医学部の6年生(現在は休学中)で、2018年の「第三回健康医療ベンチャー大賞」学生部門の優勝者でもあります。しかも、医学生であると同時に、AIの天才たちを育成する「孫正義育英財団」の財団生でもあり、医学生とAIエンジニア、データサイエンティストという複数の視点を持つ若きタレントです。

 事業としては「医療の常識をアップデートしよう」をミッションに掲げており、シンプルに説明すると「エッジコンピューティング×AI」を手掛けています。テクノロジーとしてそれを利用し、医療・介護現場のワークフロー改善を目指しています。

 西村氏が問題意識として持っているのは、現状のヘルスケアAIが必ずしも「医療・介護現場の仕事を減らすわけではない」ということです。ヘルスケアAI自体は、世界的にさまざまなプロダクトが生み出されることで盛り上がっており、医療分野では画像診断などをAIが補完することで、診断精度を上げるなどの面で貢献している部分もあることはあります。しかし、医療・介護現場で起こっている本当の労働負荷は、必ずしもそういったソリューションだけでは減らすことはできず、またAIが学習するデータもレセプトや電子カルテシステムなどの極めて限られた範囲からしか取得されておらず、医療介護現場をデジタル化を進めるには不十分です。

 そこでMETRICAでは、医療・介護現場の新しい目や耳として在宅医療に用いる医療機器に付属するAIカメラや音声センサーなどを設置し、現場の状況をエッジIoTで見守るとともに、そのデータを使ってAIが学習を繰り返すシステムを開発。主治医や介護従事者はサマリーデータのみを確認し、それは患者にもフィードバックされます。医療機器の大手企業とのプロジェクトも進んでおり、今後非常に面白い展開を見せてくれると期待しています。