社会から孤立する人がほとんどいなくなる

視覚障害者にどのような効果がもたらされますか。

 視覚障害は、かつてはどこにどのような情報があるかが分からない情報障害で、さらに移動障害を伴うと言われていましたが、今は解決される時代になっています。

 それは、医療でなくICTのようなテクノロジーの恩恵に依るものです。効果は劇的で、まず、社会から孤立する人がほとんどいなくなります。視覚障害者同士が連絡を取り合い、外出時の同行支援サービスがあると知ると外出意欲が湧いてきます。LINEも音声入力でやりとりできるなら、やってみようとなる。好きな音楽を聴け、料理のレシピも読み上げてくれる……無理だと諦めていたことができるようになって、世界が広がるのです。

 高齢だから無理ということはなく、例えば、私の外来で最高齢の患者さんは92歳ですが、趣味の琴をもう1回弾きたいと、iPadの琴のアプリを楽しんでいるのです。書道のアプリを使っている高齢者もいます。

 ここ数年は、視覚障害に加えて発達障害のケアを視野に入れてきました。例えば、脳機能の発達障害で読み書きに困難を持つ子に対して、iPadでテキストを読み上げるようにすれば、一気に問題解決が図れます。

 その先には、高齢者を考えています。耳も聞こえにくい、目も見えにくい、記憶力も落ちている。移動障害も発語障害も抱えるようになり、高齢者は障害の“総合デパート”とも言える、学びの宝庫です。高齢者を支援できれば、いかなる障害も支援できるでしょう。

 私が対象とするフィールドが視覚障害から広がったのは、東京大学大学院(人間支援工学分野)の中邑賢龍先生の研究室で5年間学んだことが大きく、今も東大で視覚障害者や支援者向けのセミナーを定期的に開催しています。

 iPhone/iPadが、医療機器ではないことは、大きな利点です。私は医師として処方したり、講演をしますが、実際の操作法は視能訓練士や看護師が教えたり、さらには患者さん同士が教え合うこともできます。中途で失明したものの、視覚障害者にiPhone/iPadを遠隔で教えるための会社を起こした人もいます。彼は弱視から全盲になったので、弱視の時の使い方も全盲になってからの使い方も、両方教えられるのです。