東京オリンピック、安全に開催できる形を世界に発信せよ

新型コロナウイルスは、今夏の東京オリンピックの開催においても大きな懸念材料になっていますが、クルーズ船から今日までの取り組みを鑑み、開催に向けて何ができるのでしょうか。

 これからも感染は散発しながら続くので、開催の延期や中止で解決するわけではありません。先ほどクルーズ船での対応における情報発信の弱さについてお話ししましたが、どうすれば安全・安心に開催できるのか、信頼できる情報を戦略的に世界に伝えていかなくてはなりません。現状を伝える能力、リスクコミュニケーションがより一層重要になると考えています。

 オリンピックは、日本を世界に見せ示す絶好の機会です。いまだ不確定なことは多くありますが、開催まで5カ月弱あるので、さまざまな知見を蓄積し戦略を立てる時間は残されています。その上で、「こういう形なら安全に開催できる」ということを世界に向けて戦略的に発信していく必要があると思います。ただし、これまでもオリンピックの前後に感染症が話題になったことがありましたが、今回は極めて難しい状況と言わざるを得ません。

新型コロナウイルス対策を通じて、社会全体が新たな経験値を積んでいるのですね。今後、どのような社会的イノベーションが望まれるでしょうか。

 テレワークや時差通勤などの促進は必要です。でも、感染対策はどうしても人との接触を避けることが推奨されるので、対策を強化すれば、人同士の繋がりを分断するような社会になってしまう恐れがある。あれもダメこれもダメという方向ではなく、経済を若干減速させつつも感染症を抑えながら平時の状態にもっていく、そういうチャレンジをし続けることが大事だと思います。

 危機への対策は、強めることよりも緩めることの方が難しい。感染者が発生した時はすぐにしっかり対策する。しかしその一方で、平常運転にチャレンジする。今後は、その難しいハンドリングをいかにやるかが重要になるでしょう。先ほどの最悪のシナリオはあくまでも最悪のシナリオとして、政府、産業界、一般市民が協力し、難局にあってもチャンスと思ってやれるところを見つけていってほしい。そのためにも私は公衆衛生の視点から、これから何をすべきか、社会的な見通しを発信し続けたいと思います。

(タイトル部のImage:新関 雅士)