唾液線から脳由来神経栄養因子(BDNF)も

空調が普及したことで、口内の乾きを覚えたり、唾液の分泌量が減ったりしているということはありませんか。

 学生たちの実習で測定してもらうと、確かに、減少傾向にあるような気がします。唾液は、正常な成人であれば、唾液腺において1日24時間、トータルで1~1.5L産生されています。年間を通じて見ると、乾燥しがちな冬に少ないのではないかと考えていますが、夏のほうが少ないとする報告もあります。

 唾液腺細胞は加齢とともに萎縮し、ほとんど再生しないので、高齢になれば、唾液の分泌量は減少します。高齢者の場合、口渇に限らず、脳卒中など様々な疾患の予防的観点から、水分を摂取した方がよいのですが、排尿の回数が増えるとして、特に冬季は水分摂取を控える傾向があります。

 また、唾液腺(耳下腺と小唾液腺)は活性酸素に非常に弱く、耳下腺はビタミンCを大量に必要とするので、ビタミンCを多く含む食品を多く摂取するなど、早い段階から唾液腺の健康維持に努めることが重要です。

 唾液腺は、自律神経により支配されているため、ストレスを避けて、リラックスした生活を送ることも大切です。発酵食品や繊維に加えて、抗酸化作用のある食品を摂取しましょう。肉や脂っこい食品は、唾液の質を下げる傾向にあるので、偏りのない食生活が大切です。ガムには、唾液の分泌を促したり、咀嚼によるリラックス作用をもたらしたり、さらにキシリトール入りであれば虫歯予防の効果もあります。ただ、歯に付きやすいなど、高齢者には不都合な面があります。

 ただし、ガムに限らず、自分の歯(入れ歯でも可)で咀嚼することにより、唾液腺で脳由来神経栄養因子(BDNF)が産生されます。唾液由来のBDNFが口腔底粘膜を透過し脳の海馬に移行し、γ-アミノ酪酸(GABA)の産生を増加させて抗ストレス作用を示すので、うつ病などの精神疾患のリスクを下げたりする可能性があることも、我々の研究で明らかになっています。