唾液を使った膵臓がんの検出技術も

唾液や唾液腺の研究から、今後色々な知見が明らかになりそうです。

 唾液は、リキッドバイオプシー(生体液体成分からがんを診断する技術)の面でも注目されており、慶應義塾大学では、膵臓がんの検出技術に取り組んでいます。膵臓がんは、早期発見しにくく進行も早いがんですが、発症すると唾液中の成分が変わってくるため、メタボローム解析(代謝物質の網羅的解析)をするのです。がん検診を年に頻回行うことは難しいですが、唾液成分の検査であれば、侵襲性もなく年に数回行うことができます。

 唾液腺は、医師の教育(医学部)では、ほとんど手つかずの分野でした。私は病理学が専門なので、約20年前から唾液腺と歯科疾患(歯周病など)との関係を研究してきましたが、疾患病理学だけでなく予防までを包括して研究しています。特に疾患予防に関する研究成果が先に出ており、高齢者施設の入居者に対して、IgAと肺炎の発症などとの関係を調べる臨床研究もしています。

 私どもの環境病理学教室では、ストレスや食事、病原体曝露など口腔の環境因子に注目し、疾患の発生原因の解明から予防戦略まで包含する「唾液腺健康医学」という新しい学問領域を提唱しています。今後も唾液・唾液腺と全身の健康との関連を追究しつつ、唾液腺の未知の機能を発見し、血液検査に代わる新たな唾液検査を開発していきたいと考えています。

(タイトル部のImage:川島 彩水)