2020年7月に開催した「2020年成長戦略発表会」で、GEヘルスケア・ジャパンは社会共創基盤の構築とパートナーシップによる共創をリードする「Edison Solution本部」の発足を明らかにした。同月末には、Amazon Web Servicesと連携し、日本におけるプレシジョン・ヘルスをさらに促進することを発表した。「幅広いパートナー企業とともに、医療のさまざまな問題解決に貢献する」――こう語る同社 代表取締役社長兼CEOの多田荘一郎氏に話を聞いた。

(聞き手は小谷 卓也=Beyond Health)

「囲い込み」は捨てるべき

多田社長が考える「Beyond Health」、あるいは今後のヘルスケアを考える上での重要な視点は何でしょうか。

 これまでのメーカーの技術開発は、より多くの患者さんに対して標準的かつコストを抑えたソリューションを提供することを目指していました。これは一見すると最適解のようにも思えます。しかし今後、個々人の多様な生き方の実現を支えていくためには、我々企業の考え方を大きく変えることが求められます。

多田 荘一郎(ただ・そういちろう)氏
外資系医療機器メーカーにて要職を歴任した後、2017年GEヘルスケア・ジャパンの代表取締役社長兼CEOに着任。少子高齢化に伴い医療を取り巻く環境が変化する中、一人ひとりにあった質の高い医療を効率よく提供する「プレシジョン・ヘルス」の実現に注力。プラットフォームとパートナーシップによる共創や、産官学連携による政策提言など幅広い活動を行っている。法政大学経営学部卒業、シカゴ大学経営大学院修了(MBA)(写真:川島 彩水、以下同)

 場合によっては何かを捨てることも必要でしょう。例えば、データや技術、特許の「囲い込み」は、捨てるべきことの代表的な1つと思っています。それらの囲い込みはこれまでの企業を支えてきた重要なファクターだっただけに、本当に開放するとなれば、企業にとって大きな転換となります。

 石油のような有限の共有資源は「コモンズの悲劇」で提唱されているように乱獲すれば最終的には枯渇します。しかし、データや特許のような資源はいくら使っても枯渇することはありません。むしろ、過少利用によって起きる“アンチコモンズの悲劇”に注意する必要があります。

 つまり、有効活用されないことによって、便益が損なわれる可能性あるということです。まさに現在は、その状況に近いと私は見ています。